NPO法人 レター・ポスト・フレンド相談ネットワーク
ひきこもり経験者が、当事者だからこそ気持ちが分かる、寄り添えると、手紙によるピア・アウトリーチの活動を1999年から行っている。ひきこもりの当事者だった田中敦さんが、対面や電話での相談を「かなりハードルが高い」と感じていた経験があり、手紙を活用することにした。ピアサポーターといわれる当事者だったボランティアは、何気ない日常や自己紹介の手紙を書き、自身にも相手にも過度な、プレッシャーにならないような、家にいながらも社会とのつながりを感じてもらえるよう心掛けている。外出できるようになった人に向けた当事者グループ「SANGOの会」では、居場所を月2回提供するほか、社協のボランティア活動センターの協力により、中間労働として仲間とともにできる軽作業等を紹介するなど、年齢制限は無く、国の制度の狭間にいる中高年も含めて、幅広い年代層に対応している。昨年の相談者は270件。手紙というアナログの良さを活かした活動が、ひきこもる人たちの心に留まり、ゆっくりと寄り道しながら遠回りでも着実に社会へ導いている。
それぞれのひきこもり経験値を活かすピアサポート活動
ひきこもり当事者団体として1999年設立当初から当事者とひきこもり体験のあるピアサポーター双方に無理なく接点をもつことができる、手紙によるピア・アウトリーチ活動を続けています。当事者が作成した絵葉書を緩やかに届ける活動を通して「対面はもちろん、インターネットでの交流も苦手、ただ手紙だと不思議と正直になれる」などの率直な感想が寄せられています。
ひきこもり支援というと、とかく外に向ける活動が多いですが、当法人では在宅でもできる活動を増やすことに力を注いできました。具体的には手紙はもちろんのこと、 2000年からの会報「ひきこもり」(隔月年6回発行)づくりもその一つです。記事作成から取材、編集、発送作業まで当事者たちが担い、まさに貴重なピア活動を発信する場になっています。紙面は当法人の公式ホームページからバックナンバーを含め閲覧できます。
2007年からは似たようなひきこもり経験がある当事者同士が自由に集う当事者会SANGOの会を開設しました。現在は毎月2回、会場開催と併せてオンラインでの場づくりを実施しています。当事者だからこそ分かち合えるものもあり、交流活動を通して一歩踏み出した当事者も多いです。
2010年NPO法人化以降は、北海道の広域な地域特性を活かした活動に取り組み、とりわけサテライト型の居場所事業は旭川市を皮切りに小樽市、江別市、苫小牧市、帯広市など道内各地で開催してきました。札幌市に拠点を置くだけでは遠隔地に住む当事者を支えることは難しく、地域に置き去りになりがちです。しかし本事業の展開によってそれぞれの地域に拠点としての居場所をつくることができ、地域の当事者が気兼ねなく参加することができるようになりました。
2016年には北海道ひきこもり当事者連絡協議会を設置しました。道内にある当事者会5団体が加盟し協働で取り組む相互連携事業をしています。また、2018年には札幌市の委託を受けひきこもりに関する集団型支援拠点設置運営業務:「よりどころ」を札幌市ひきこもり地域支援センターと協働で運営しています。行政がバックアップし当事者団体と支援団体が一体となる事業は全国的にも珍しく関心度も高いです。
これまで当事者というと支えられる側として見られてきましたが、これからは支える側として活動を担っていく立場だと思います。当事者の理解を広め、長くひきこもってきた経験値を肯定的にとらえる社会貢献活動を今後も続けていきたいと思います。
理事長 田中 敦