NGO Udon House
看護師として働いていた楠川富子さんは、定年後にJICAシニア海外ボランティアとして、プノンペンの国立小児病院で4年半医療支援活動に従事。その際子どもたちの生存権や教育権が保護されておらず、衛生に関する教育もされていない状況に衝撃を受けた。帰国後、3年間再度病院で働いて資金を作り、家も売ってカンボジアへ移住、NGO Udon Houseを設立する。香川県、香川大学、JICAとUdon Houseの共同事業として、地方の州でモデル小学校32校に保健室を作り子どもたちの健康管理と衛生改善教育に3年間取り組んだ。この活動は現地の教育者に評価され、保健室のモデルケースとなった。この他、地域の人々に寄り添い、子どもたちの健康を守るために母親や大人への衛生教育や栄養指導、救急措置などの指導も行ってきた。年に一度は日本へ帰国し、講演活動で資金集めをしては、カンボジアの小学校にトイレや手洗い場を作るなど健康維持のためのインフラ整備への支援も行っている。「町の保健室」を作って健康相談にのり、衛生指導や正しい対処法などを伝えている。
この度は、うどんハウスの活動に対して表彰という名誉をくださり、誠にありがとうございます。
うどんハウスは、うどんを製造している団体ではありませんことを最初に申し上げておきます(実際に問い合わせもあります、笑)。私は「うどん県」と称される香川県の出身で、カンボジアでの支援活動を支えてくださるドナーの方のほとんどが地元香川県の方々です。支えてくださるみなさまと一緒に活動をしているという意味を込めて「うどんハウス」と名付けました。
私がうどんハウスを始めたきっかけとなったのは、40年間看護師として務めた赤十字病院を定年退職した後、JICAのシニアボランティアに参加したことです。カンボジアの国立小児病院で4年半看護師として活動しました。そこで毎日、病気の子どもに接し、悲しい場面にも遭遇してきました。同病院は貧困者に対しては国が無料で治療をしますが、亡くなった子どもを供養するお金がなく家族が遺体を病院にそのまま置いていくケースもあったのです。私は、亡くなった子どもが、家族にとって“ただの物”になってしまったことに胸を締め付けられました。こうなる前に、何ができるだろう? 考えた結果、カンボジアの子どもにとって必要なのは「病気の予防」だと考えたのです。私は医者ではないので病気を治すことはできませんが、病気にならないためにどういう行いや生活をしたらよいのか、それを伝えることはできます。2015年、カンボジアで子どもの健康を守る活動を目的としてNGOうどんハウスを設立しました。
ご縁があって、カンダール州カンダルスタン郡の小学校4校に保健室を作り、手洗いや歯磨きなどの衛生活動を教え、身体測定を行いました。州や郡の教育事務所のご協力もあって最終的に同郡にある全ての小学校(32校)に保健室を作り、教師への保健の情報提供と、子どもたちへ健康の大切さを教えてきました。うどんハウスの活動に関心を持ってくれた親たちが保護者会に参加してくれるようにもなりました。コロナウィルスの感染拡大によってしばらく地方での活動は自粛せざるを得なくなりましたが、私たちが指導してきた手洗い等の衛生行動が、コロナ感染拡大阻止に少しでも役立っていただけたかもしれません。
今回の受賞を励みとして、これからもカンボジアの子どもたちの健康を守る活動を微力ながら続けて参りたいと思っています。
代表 楠川 富子