浅野 美幸 と JLMM の仲間たち
日本カトリック信徒宣教者会(以降、JLMM)から2002年にカンボジアに派遣された浅野美幸さんは、プノンペン中心部から南西20kmほどに位置するステンミエンチャイ地区ルッセイ村第17地区で、経済的な理由で学校に通えない子どもを対象にしたプレスクール「子どもの家」を開設し、識字教育、情操教育、衛生教育を開始した。また、母親たちにも栄養改善、衛生改善、環境改善のセミナーを集落ごとに実施して、村全体の生活向上をめざした。2007年には住民の収入創出のために「屋台貸し出しプロジェクト」を開始して、地域の女性たちが菓子の販売で家計を支えられるようにし、「母親センター」を設置して働く母親をサポートする託児所を開いて好評を得た。このような総合的なアプローチで集落全体の生活向上に貢献した。浅野さんは新型コロナウイルス感染症の世界的な流行により、緊急帰国を余儀なくされたが、毎週行われる現地スタッフとのリモートミーティングにより活動を継続している。現地の人々のニーズに応え、ともに歩む活動を継続していく。
この度は、社会貢献者として表彰していただき、誠に有難うございます。現地スタッフはじめ、JLMM関係者一同大変嬉しく思っております。これまでの活動を支えて下さったすべての皆様にあらためて感謝申し上げます。
私たちが活動をしているカンボジアの首都プノンペン市郊外のステンミエンチャイ地区は、ゴミ集積場や縫製工場で働いている貧困層が多く住んでいる地域です。子どもは労働力とみなされ、親は子どもの教育にあまり熱心ではありません。小学校に入学しても、基礎的な生活習慣や学力不足により退学する子どもが多い地域でもあります。
子どもが小学校に入学しても落ちこぼれず、学校を好きになってもらえるように、だれでも時間のあるときに学びにこられる「子どもの家」を就学前の子どもたちを対象に運営しています。また母親たちが子どもを預けて安心して働きにいけるように託児所を増築し、75人の子どもたちがここで学んでいます。
子どもたちの教育や医療を充実させるために、「母親が変われば家族が変わる」というコンセプトを基に、母親のエンパワメントに協力し仕事を提供していく「母親能力向上プログラム」を2012年から実施しています。母親の教育では、住環境の衛生改善、保健衛生、栄養改善セミナーやライフスキルトレーニングなどを地域の200世帯を対象に、村落の軒先などで、10人ほどの小グループにごとに15分程度の短いセミナーを実施しています。健康的な生活を送るためには、衛生的な暮らしや家庭での栄養改善がとても大切なことを母親たちは学んでいます。
また、ごみ収集に代わる衛生的で安定した収入手段として、2007年より「屋台貸出しプロジェクト」を実施し、母親たちに仕事の機会を提供しています。母親たちは、クレープ菓子「ロッテイ」や秋田で「ババヘラアイス」を販売している進藤冷菓様から技術協力を得て作った「ハッピーアイス」を学校の前などで販売しています。屋台の仕事で得た収入で借金を返済し、子どもを英語塾に通わせることができたり、故郷に小さなロッテイ御殿を建てた母親もいます。母親たちが前を向いて困難を乗り越えていく姿から生きる力をもらい、彼らのことを想うことで私の人生が豊かになった17年間でした。
現在カンボジアはコロナ禍で活動が制限され、緊急食糧支援として毎月185世帯に食料パックの配布を実施しています。この度の受賞を励みに、これからもJLMMはカンボジアの子どもたちの教育や健康の充実に向けて尽力してまいります。
浅野 美幸