防護服支援プロジェクト
新型コロナウイルスが蔓延する2020年4月19日、東京都済生会中央病院(以下済生会)から防護服が不足していると相談を受けた薗部喜史さんは知人の新健一さんに相談。新さんは気仙沼市の女性団体「気仙沼つばき会」の小野寺紀子さんに相談すると、つばき会は気仙沼市民に声をかけ、東日本大震災でお世話になった恩返しにと簡易防護服づくりを始めることとなった。4月22日に任意団体として活動することを決め、東京に本部と事務局、気仙沼にも事務局を置いた。この間、薗部さんは済生会と共に防護服の仕様を決め、作り方の動画と型紙をウェブサイトに掲載した。新さんは資材の選定と調達、寄付金の募集を行った。4月27日には300着を済生会に届け、この活動が新聞やテレビ、SNSなどを通じ瞬く間に全国広がって、全国から製作ボランティア、寄付金の協力の申し出があった。防護服は70ℓの業務用ポリ袋と養生テープで製作するが、検証を重ね着やすく、安全に脱ぎやすいものに改良されていった。2021年10月1日時点で、120,000着以上を全国397の医療機関や医師会、高齢者施設へ届けることができた。
「東京都済生会中央病院の防護服の備蓄が底をつく恐れがあり、看護師や事務員に加えて患者までが総出で手作りしている。誰か防護服を作って、病院を助けてもらえないか?」緊急事態宣言下の2020年4月19日、深夜にかかってきた1本の電話から防護服支援プロジェクトは始まりました。
第一報の翌日から数名で枠組みを決め、東日本大震災の被災地である気仙沼の多くの市民が立ち上がってくれて、4月27日には最初の300着を届けることができました。短期間に製作仕様の決定、適した資材の選定・調達、寄付金の募集、ホームページの立上げ等を進め、地元紙、全国紙、テレビ局などが取り上げてくれたこともあって、この活動はあっという間に全国に広がりました。1,000人以上の製作ボランティアと多くの寄付者の助けもあって現在も活動を続けることができ、これまでに約13万着の防護服を全国の医療機関・高齢者施設などに無料でお届けしてきました。活動を始めた当初には想像もできなかった大きな活動となりました。
気仙沼の方々は震災後に多くの方から支援を受けたことへの恩返しという気持ちもあったそうですが、実は済生会も気仙沼に医療チームを派遣していたことが途中でわかりました。
新型コロナウイルス感染症という未知の疫病との戦いにおいて、医療従事者・医療体制を守り、感染の危険性の高い高齢者や障がい者をはじめとする日本国民を守るという大義があればこそ、大勢の人々が集まり、不可能だと思われた事が次から次へと実現したと感じています。
また、自分のためではなく、他人のために頑張るという一人一人の意識が、プロジェクトを推進する上での最大の原動力であったように思います。
個人やグループに加えて、学校や企業単位での製作ボランティアとしての参加希望が次々と増えましたが、防護服作りに参加して下さった多くの方々は、防護服を作りながら他人を助けるという活動に参加できた喜びを伝えてくれました。また、緊急で立ち上げた任意団体であるにも関わらず、全国多くの個人や企業が資材購入等の経費を賄うための寄付をしてくださったことも感謝の念に堪えません。
今回の賞は、このプロジェクトに関わった全ての方々が頂戴したものと思っておりますが、困っている他者を助けるという尊い活動に喜びを感じるという実体験をした多くの人たちが、現代の日本における助け合いの在り方について考えるきっかけになってくれることを願い、コロナ禍を乗り切ることができるまで、出来る限り支援活動を継続していきたいと思っております。
共同代表 薗部 喜史