NPO法人 こどものちから
2013年、小児がんの子どものきょうだいを応援する団体として設立。活動の場所は、国立がん研究センター中央病院小児病棟の待合室。ここは全国から難治性の小児がんの子どもに付き添って訪れるきょうだいや親たちのための空間。ボランティアがおもちゃや遊具の除菌や整理を行い、きょうだいの託児や遊び相手をしている。アメリカでは子どもの入院に対して必ずきょうだいのサポートが含まれ、病院等で様々な取り組みが展開されているが、日本ではきょうだいに対する公的な支援はほとんどなく、ボランティアに依存している。小児病棟では親の面会時、感染症予防のため小学生以下のきょうだいは病棟に入れないため、ひとりで何時間も待たされていて、親は病児の面会に集中できない。このような状況が「こどものちから」の活動によって、子どもや親の心にゆとりができる存在となる一方で、待合室活動を利用した親の中には退院後、地元の病院で同様の活動を始めた人もいるほど。「人のいる待合室」は、きょうだいと遊びながら病児と家族を支える場やきょうだい同士を繋ぐ場、育児相談の場、時には死に直面するきょうだいを支える場として必要な場所である。閉鎖的な日本の病院に「人のいる待合室」が広まるように活動を継続している。
井上るみ子
このたびは「社会貢献者表彰」をいただきありがとうございました。
前日の懇親会では、一緒に受賞された方々の素晴らしい活動を紹介され、日本人であることを誇らしく感じました。その中に入れていただけましたことを光栄に存じます。そして身の引き締まる思いがしました。またご推薦くださった「認定NPO法人病気の子ども支援ネット 遊びのボランティア」理事長の坂上和子さんに深く感謝申し上げます。
24年前、三男が小児がんに罹患したのが活動を始めるきっかけでした。この事態を家族で乗り越えようと、私は病児以外の3人の子ども達に全てを話し、彼らは理解して協力してくれていると思っていました。ところが9ヶ月後に病児が他界すると、3人の子ども達は理解していないどころか、深く傷ついていたことを知りました。お互いを理解し、話し合えるようになるまでには、とても長い時間がかかりました。
病児が他界した後も親の会に所属し、同じような家族と関わりました。家族相談士という民間資格を取得後、長女の提案で小児待合室での活動を6年間、1人で実施しました。巡り逢った子ども達は、病児もきょうだいも皆それぞれにがんばっていました。親の会を離れ、安定した活動を目ざし、2013年にNPO法人こどものちからを立ち上げると、賛同者も増え、活動回数や時間を増やすことができるようになり、利用者も増えました。ボランティアとして活動に参加してくれる人も増えました。新型コロナウィルス感染症で活動休止になる前の2019年度では、のべ600名の病児やきょうだいに遊んでもらうことが出来ました。
ここでは、子ども達は安全に整えられた安心出来る空間で、伸び伸びと自分を表現することが出来ます。溜まったエネルギーを発散したり、時には抱え込んでいる不安なことや嫌な出来事を私達に話してくれたりすることもあります。私達の役割は、こどもがこどもらしくいられるように遊びを通して関わることだと思っています。
病院内での対面活動は現在も休止ですが、今年度は小児病棟師長の依頼を受け、オンライン病棟訪問を月に一度実施しています。画面越しでも子ども達に逢えるのは嬉しいです。新型コロナウィルス感染症が収束して、活動が再開されたら、溜まった疲れを少しでも癒やせるように、より充実した活動につなげていきたいと思います。受賞にあたり、温かいお心遣いを含め、たくさんのご褒美をいただき「これからもがんばろう。」と思いました。ありがとうございました。
松本待子
このたびは「社会貢献者表彰」という大きな賞をいただきまして誠にありがとうございました。前日の懇親会や授賞式を通して皆様の素晴らしい活動のお話しを伺うことができ、とても心強く感じました。
私がこの活動に参加したのは8年前です。息子を小児がんで亡くし、3人のきょうだいを深く傷つけてしまった代表自身の辛い経験を通して、きょうだい支援の必要性を感じ、どうしても実現させたいと説得されました。そしてその熱意に深く共感し、スタッフとして活動することになりました。私自身、ゼロからのスタートでした。8年間、小児病棟の待合室できょうだいや病児と遊びながら、子ども達が抱える不安や寂しさ、親御さんが抱えている不安や悩みなどに少しずつ寄り添うことができるようになりました。それと同時に自分のまわりにも、成人したきょうだいが心に傷を抱えたまま生活していることにも気づきました。この活動をしていなかったら、全く気づかずにいたでしょう。改めて「きょうだい支援」の重要性を実感しました。これからも地道に長く、この活動を続けていきたいと思っております。
「こどものちから」にとって、このたびの受賞はとても大きな力になりました。そしてこの2日間、スタッフの皆様の温かいお心遣いに心より感謝申し上げます。ありがとうございました。