大学を卒業後、1999年にキヤノン株式会社に就職。2003年にドイツへ赴任後、当時４歳の長男が知的障害/自閉症の診断を受ける。慣れない異国での生活で多くの困難と家庭内の混乱を経験。2008年の帰国と同時にシングルファーザーとなり、川崎市での父子生活が始まる。

息子は地域の小学校の特別支援学級に通学するも、自閉症の特性に加えて環境や習慣の変化により当初は通学さえままならない日々を送っていた。多くの支援が必要だった息子のために寝る間も惜しんで奔走するが、息子との地域生活を送る中で、居場所がない、いじめに遭う等の困難に直面し、学校や福祉サービス、行政等に頼るだけでは問題は解決しないと思い至る。そこで、2014年にNPO法人くるみ－来未を設立し、親子が参加しやすいイベント（お弁当づくり、アウトドアクッキング）を行うなど当事者親子だけでは実現しづらいことを支援者の力も借りて実施。また、発達障害の啓発講座など一般市民に向けた事業活動にも力を入れ、誰もが暮らしやすい社会づくりのため試行錯誤を続けている。

2020年2月には、川崎市中原区において地域の居場所「くるみのおうち」を120人の仲間とともにＤＩＹで完成させる。しかし、その後のコロナ禍により息子の日常生活は大きな影響を受ける。こだわりが強くなったことで家庭への負担が重くのしかかり、その状態が今でも続いている。他の多くの障害児者家庭もコロナ禍による影響を受けており、日常生活の混乱、家庭内暴力や虐待の増加、社会的孤立、休職や離職等、深刻な事態に直面している。そのような状況にある家族がほんの少しの時間でもホッとできるよう「みんなでカレーを食べる会」等のイベントや活動を月2回ほどのペースで開催。2021年6月には事業内容と運営体制が適切であることが認められ、川崎市より認定を受ける。

今後の展望は、「くるみのおうち」を起点に「インクルーシブな社会づくり」の担い手を育てる事業活動に力を入れる。これにより、学校・会社・地域など様々な場面において、障害のある人が地域で豊かに生きることができ、親が「この子を育てることができてよかった」と思えるような社会を創ることが目標である。

自身はキヤノン株式会社で管理職に昇進。息子は特別支援学校高等部を卒業、福祉事業所に通所して3年目。今年1月には成人式を迎えた。コロナ禍による混乱は現在も続いているが、多くの人たちに支えてもらいながら、息子が豊かな地域生活を送ることができるよう奮闘している。

認定NPO法人くるみ－来未 理事長 /
キヤノン株式会社デジタルプリンティング事業本部 主幹

• 
  親子でお芋堀り　2020年11月
• 
  ガイドヘルパー講座の研修（登壇）の様子　2020年11月
• 
  くるみのおうち DIYの様子　天井の壁紙お息子とはがしています　2019年6月
• 
  くるみのおうち　DIYでの集合写真　2019年6月
• 
  代々木オリンピックセンターでのアウトドアクッキング　2018年5月
• 
  青年たちとの食事づくり　2017年11月
• 
  音楽イベントにて　2017年9月10日
• 
  お弁当づくりイベントにて　息子お二人で調理中　2016年7月3日