NPO法人 Fine
日本で不妊症に悩むカップルは、5.5組に1組といわれ、何らかの不妊治療を受けている人は50万人に近いと推測されている。不妊は女性だけの問題と思われがちだが、男性不妊も決して少なくない。「不妊」「不妊治療」が社会全体に正しく理解されること、自分で納得して選択した治療を安心して受けられる環境を整えること、不妊体験者が社会から孤立することなく健全な精神を持ち続けられる環境を整えること等を目指して2004年1月に発足、翌年からNPO法人として活動。主に不妊治療患者支援(情報提供・精神的サポート・コミュニケーションを目的としたウェブサイトの運営管理)、不妊(治療)の啓発活動(企業・自治体と連携して研修・講演会等)、公的機関・医療機関等への働きかけや勉強会、イベント開催、ピア・カウンセラーを養成する独自の講座運営等を行っている。また、国際的な不妊患者連合に参加して、各国の不妊治療に関する情報交換を行い、日本での活動に反映させている。不妊や不妊治療が特別視されることなく、“普通のこと”になる社会をめざし活動している。
この度は、社会貢献者表彰という大変名誉ある賞をいただき、スタッフ一同心から感謝しています。多様な社会課題に対してご尽力されている方々と一緒に受賞させていただいたことは、大変光栄なことと嬉しく思います。
NPO法人Fineは、自らの不妊治療のつらさや周囲に理解してもらえなかった体験から、不妊体験者による不妊体験者のためのセルフサポートグループとして2004年に設立されました。日本で不妊症に悩むカップルは5.5組に1組といわれ、何らかの不妊治療を受けている人は50万人近いと推測されていますが、「不妊」や「不妊治療」はその内容を正しく知られていないがゆえに特別視されることも多く、そのため当事者は不妊であることを周囲に告白できないという現状があります。相談相手をなくし、すべての問題を自分ひとりの心の中に抱え込まざるを得ないため、ますます孤独に陥りがちです。そこで私たちは、不妊が個人の問題ではなく社会課題であることを広く社会に啓発し、不妊当事者が抱える4つの負担の軽減を目指して活動をしています。
1つ目は精神的負担の軽減です。当事者が当事者の心のケアをする重要性に着目し、専門家と独自に開発したプログラムで不妊ピア・カウンセラーを養成する講座を2005年に開講しました。認定されたピア・カウンセラーは、自身の経験をいかして当事者の心のケアをしています。2つ目は経済的負担の軽減です。不妊治療に対する助成金の条件緩和・撤廃、治療費の一部保険適用を求めて、国へ要望書の提出や署名活動を行なっています。2020年には所得制限の撤廃と助成金の増額が実現しました。3つ目は身体的負担の軽減です。厚労省に薬剤認可の要望書や、長引かない治療のためのガイドライン整備の要望書を提出し、不妊治療の環境改善を求めています。4つ目は時間的負担の軽減です。仕事と不妊治療の両立が困難であることを、日本初の不妊白書を発行し広く社会へ訴えました。企業へは、仕事と不妊治療の両立のための支援制度導入に関わるコンサルティングも行なっています。
今回の受賞は、不妊や不妊治療は個人的な問題ではなく、社会課題であると認めていただいたとあらためて感じています。「一人ひとりの声は小さいけれど、集めて届けたら社会は変わるかもしれない」とスタートし、17年間の活動を通して、「社会は変えられる!」と感じています。本当にありがとうございました。
理事長 松本 亜樹子