藤島 海琴
草野 寧彩
本田 悠
福岡の神湊から7キロ、世界遺産沖ノ島と関連遺産群の大島に暮らしバレーボール部に所属する3人は、2019年8月31日の16:30分頃、1年ぶりに大島で行われた合同練習を終えてフェリーで帰る他校生を見送った。その直後「子どもが溺れた!」という声を聴き、波止場の先端の灯台に3人で駆け付けると、茫然とする父親と小さな男児、海には溺れている女児の姿を見つけた。バレー部副キャプテンの藤島海琴さんは、足の速い草野寧彩さんに部活帰りの荷物からペットボトルを持ってくることと、フェリー乗り場への連絡を、本田悠さんには動揺している男児に付添うように指示。さらに藤島さんはパニックになっている父親に救助させるのは危険と判断し、「私が飛び込むので、助け上げて」と伝えて海に飛び込んだ。溺れている女児にペットボトルを抱えさせ「これを持っていればお父さんの所に帰れるからね」と声を掛け、女児を抱えて50m程の距離を泳ぎ無事救出した。藤島さんの冷静な判断と3人の連携プレーが女児の命を救った。
8月31日。あの日はこの季節にしては涼しい気候でした。
私たち3人は、合同チームメイトたちを16時20発のフェリーで見送るために、波止場の赤灯台のところまで行きました。大きく手を振って見送った後、3人で談笑しながら岐路につこうとしました。だいぶん進んだところで男の人の声がしました。最初はうまく聞きとれず、耳をすませました。本田と藤島は二度目も聞きとれませんでしたが、草野は聞き取りました。「人が落ちたっていいよる」草野の声を聞き、3人でもう一度もといたところに戻りました。記憶の中では、親子3人がそこで釣りをしていました。しかし駆けつけると、父親と小さな男の子の2人しかいません。海を見ると女の子が溺れています。藤島はどうすれば最善かを考え、草野にペットボトルを持ってくるように、本田に親子に付き添うよう伝えてペットボトルを受けとったあと海に入りました。その間草野はターミナルまで人を呼びに走り、本田は上から指示をしてくれました。
あの場に3人いてよかったと今でも思います。少しでも判断が遅れれば取り返しがつかなかったと思います。女児の安全を常に考え、慎重に行動したあの日は、3人とも疲れて家に帰るとすぐに眠ってしまいました。
海は美しく、楽しい場所です。だからこそそこで命を落としてしまう人が一人でも少なくなることを私たちは願います。