戸塚 仁
臓器移植者(レシピエント)の移植臓器の長期生着には生活習慣病を予防することが重要である。食事内容の見直しだけでなく、運動も必要なことが日本移植学会により報告されている。
戸塚さんは、29歳で生体腎移植を受けて元気になったことで、日本におけるレシピエントの日常生活の中にスポーツを取り入れるため企画、運営、などの啓発活動や就労支援相談等を行っている。中でも、毎年開催するレシピエントのオリンピックである全国移植者スポーツ大会の企画、運営・実施や世界移植者スポーツ大会連盟(WTGF:World Transplant Games Federation)が主催する世界移植者スポーツ大会への参加、選手の派遣等を行っていて、これらの活動が評価され2016年にWTGFが主導するレシピエントの生活に運動を取り込むことを推奨するプログラムである「fit for life」のアンバサダーに選出された。 戸塚さんは選手としても参加しており世界大会の短距離100m、200mで金メダルを取っている。その他「移植DE散歩」、「ありがとうの日」の企画等、SNS、ブログ等で情報や移植啓発を発信し広く認知してもらうための活動を続けている。
私は1998年4月15日に母から腎臓の提供を受けました。その時にこのような素晴らしい医療を受けたのだから、次に続く人のサポートがしたいと考えていました。腎臓移植後に初めて参加した2000年の全国移植者スポーツ大会、翌年兵庫県神戸市で行われた世界移植者スポーツ大会やイベントに参加することにより仲間ができ、NPO日本移植者協議会が企画するランニング教室やロードレース等のメンバーとして声をかけていただくようになりました。元々NPO日本移植者協議会ではスポーツによる臓器移植医療の啓発活動を行なっていたため、私には参加しやすい環境でした。その後、NPO日本移植者スポーツ協会で全国移植者スポーツ大会の運営や世界移植者スポーツ大会の選手派遣、グリーンリボンランニングフェスティバルの調整を任されるようになり微力ながら日本の移植医療の推進に協力してきました。
私に転機が訪れたのが2016年、世界移植者スポーツ連盟が主催するfit for lifeの初代アンバサダーに13人のうち1人に選任されました。fit for lifeは‘More Transplant Recipients, More Active, More Often’というスローガンに基づき、スポーツによる臓器移植からの早期回復、スポーツによる健康維持・向上を目的として各国のアンバサダーが活動を行っております。
私と仲間が実施している日本でのfit for life活動は、移植医療を知って頂く活動として、毎月10日を「ありがとうの日」として、臓器移植者(レシピエント)から臓器提供者(ドナー)に向けて「ありがとう」のメッセージのボードを持ったレシピエントとの写真とメッセージを、ブログ・SNSを通じて発信しております。これまでに41名のレシピエントに協力をいただいています。また、レシピエントの体力維持、向上を目的として「移植DE散歩」というウォーキング企画を実施しています。アプリを利用して設定されたコースのチェックポイントを歩きながら、楽しんでコースの完歩を目指す企画です。主に関東と関西地域で計10回実施しており、こちらもブログ・SNSで発信しております。このfit for life活動については第51回臨床腎移植学会や第54回日本移植学会総会で発表する機会にも恵まれました。
そして、この度はこのような大変名誉ある賞をいただき、感謝申し上げます。この賞はNPO日本移植者協議会、NPO日本移植者スポーツ協会そして私の企画にご協力頂いた方のサポートにより受賞出来たものです。この場をかりて御礼申し上げます。この賞を今後の励みとし、臓器移植医療の啓発活動に励みたいと思います。