社会福祉法人 神戸いのちの電話
様々な心の悩みや人生の危機に直面して、相談相手もなく、孤独の中で生きる力を失いそうになっている人たちにボランティア電話相談員が隣人として支え、生きる希望を育んでもらおうという願いから出発した市民活動で1981年に発足した。95年の阪神大震災後の際も1ヶ月足らずで業務を再開し、01年には365日化を実現。養成講座を受講したボランティアが、交代で電話相談員となり、根気強く傾聴。相談者が想いを語る中で、自分自身何かしらの気付きに導けるようにと活動をしている。
電話相談員はボランティアながら、相談者から心無い言動で傷つけられることもあるが、この団体ではスーパーバイザーを付けて、相談に応じる体制をとっている。これまで3万人にも上った自死の数が、ここ数年2万人前後になっていることは、こういった活動による成果でもある。自殺をほのめかす人に対して、“今日は辞めようね、明日また電話をかけてね”と伝えることは、まさにその名の通り、いのちの電話となっている。
この度、第53回社会貢献者表彰の選考に際し、受賞の栄を受けることができましたことに心から感謝申し上げます。
私たち、神戸いのちの電話は、様々な心の悩みや人生の危機に直面して、相談相手もなく、孤独の中で生きる力を失いそうになっている人たちに、ボランティアの電話相談員が寄り添い、傾聴し、困難や苦難、孤独の中から一歩前に踏み出す働きを続けています。1981年に発足して以来、ほぼ毎年年間12,000件の相談を受け付け、365日間休むことなく、約140名のボランティア相談員が受話器を握り、ストレスと闘いながら、少しでもコーラー(通話者)の力になろうと励んでいます。その相談内容は、多岐に亘りますが、多くは人生そのものや生きがいに関すること、家族や友人などの対人関係に関すること、経済的な困難や仕事に関すること、そして、健康問題に関することなど様々な悩みや辛さが吐露されます。どのテーマに関しても相談員は根気強く、傾聴に徹して対応していきます。
この相談員を如何に獲得し、養成するかも団体としての大きな課題です。新任の相談員を獲得するための1年半に及ぶ相談員養成講座や現行の相談員のための継続研修も一年を通して実施され、その受講が義務化されています。このような相談員の質の向上は適切な電話相談では不可欠のこととなります。
また、電話相談だけでなく、法人を維持するためにボランタリーな委員会活動や部活動を積極的に展開し、イベントやバザーなどを通して資金を獲得し、法人を財政的にも支えています。イベントやバザーでは、その企画、準備、実施に至るまで相談員がボランティアとして貢献し、法人を支えているのです。
そして、これらの活動を支える役員(理事・監事・評議員)も全員ボランティアとして、多忙な中の時間を割いて、理事会などの会合を運営しています。
統計上の自殺者の数字は2012年から年々下降を続けており、最多で3万人を超えていた時代と比して今は2万人少しに減少しています。しかし、神戸いのちの電話を訪問する電話相談は減ることもなく、むしろ増加しているのではないかと思われます。社会の混迷が益々深くなり、人々の悩みも複雑化する中で、私たちの活動も更なる進化と深化が求められます。今般の社会貢献者表彰はそのような私たちを大いに励ます機会となり、益々力を得て、次の目標に向かって前進したいと思っています。改めて厚く御礼申し上げます。
理事長 水野 雄二