社会貢献の功績
認定NPO法人 こどもの里
日雇い労働者の街、釜ヶ崎のこどもたちに、安心・自由・健全な遊び場を提供しようと、1997年にスタートさせたミニ児童館が起源。訪れるこどもからは、背景にある困難な家庭環境が見えてきたことから、様々なサポート体制を整えてきた。こどもの里は、遊びを中心に生活習慣やいのちの大切さを学ぶ場であり、またこどもの家族の緊急避難場所や、生活相談の場でもあり、里親・ファミリーホーム、自立援助ホームなど社会的養護の場でもある。
毎週末にはボランティアの助けを得て、様々なイベントが開催されている。2016年には「さとにきたらええやん」で映画化された。また、日雇い労働者の街・釜ヶ崎が、日本の高度成長や金融危機、行政に翻弄されてきた歴史を、こどもたちが学び、路上生活を続ける人に、毛布・おにぎり・お味噌汁等を配りながら声掛けをするこども夜回りは、毎年1月〜3月まで毎週のように開催されている。こどもの里以外にも、全国からこどもたちが集まり、学習会に続きグループに分かれて夜回りを行うが、これまで35年にわたり開催されている。この学習会を通じて、命の尊さと差別や偏見について学び、路上生活を余儀なくされている人々に心を寄せる機会となっている。
こどもの里には二つの大きな信念がある。一つは、こどもの最善の利益を考えること。もう一つは、こどもの自己肯定感を守り育むこと。この二つの信念のもと、活動をしている。
一般的に「西成・釜ヶ崎」は恐い所らしい。しかし私は釜ヶ崎に来て50年、恐いと思った事が無い.それどころか、こんなに人間らしい街、こんなに暖かい街は他地域には無いと思っている。
そんな街に生きる子どもたちはと言えば,実に子どもらしい。実に澄んだ目をしている。その目の輝きに圧倒された。出会った子どもたちには、凄い「力」があった。感じる力、個性の力、人と繋がろうとする力、降りかかってきた問題を解決しようとする力、外からの抑圧を跳ね返してしまう力(レジリアンシー)、傷つけられた自分を慰め、癒す力、親を慕う力など。これらが「子どものもつ力」、「生きる力」。この子たちの生活・生き様にはハングリーさがある。言い換えれば、「心を使って」生きている。ここには「家庭」はないけど「家族」がしっかりある。
この釜の子どもたち中心に「子ども夜まわり」なるものを、1986年度から毎冬行なっている。「火の用心」の夜回りではない。道端で、ビルの軒下で野宿する人たちを訪問する夜まわりだ。道端で冷たくなっている人と出遭った。年間釜ヶ崎に500人もの行路死者がいる。「一人の人も死なないで一緒に暖かい春を迎えたい」を合言葉に、野宿せざるをえない人の命を守るのが目的だ。野宿者に対する偏見と差別に、子どもらの力で抗する。夜まわりなんかしなくてもいい社会にしたいと。
この夜まわり活動で、私たち大人が想像もしなかった「子どもの力」に出会った。野宿者への関わり方である。路上で寝ている人を見つけると、何のためらいも無く、「こんばんは。体大丈夫ですか?」と駆け寄り声をかける。「ありがとう。大丈夫やで。あんたらこそ風邪引きなや」とおじさんたち。大人には到底出来ない業である。子どもたちのこの自然な無垢な「人と繋がろうとする力」は、野宿者からの最高の褒め言葉「ありがとう」をいっぱい浴びて、傷ついた子どもの心にふつふつと他者へのいたわり・心配の心が息吹き、それが自分自身への愛しさと自信を息吹かせる。一方野宿者と言えば、寂しく怯えながらいる寝床に子どもらの訪問を受け、「これで明日もまた頑張れるわ」と生きる気力を取り戻す。夜まわりでの子どもと野宿者との出会いは、お互いがエンパワメントされあう関係を生み出している。
この「子ども夜回り」に昭恵夫人も3回参加され、子どもらと野宿者に声をかけられている。今回の社会貢献者受賞は、この子どもたちへのものだと私は理解させていただいた。感謝のうちに。
理事長 荘保 共子