社会貢献の功績
村井 俊治
代表 村井 俊治
地球観測衛星からの情報をもとにしたリモートセンシングが専門。東京大学名誉教授。日本への木材輸出と焼き畑農業でタイの熱帯林が激減しているのを衛星画像から知り衝撃を受けた。交流のあったタイ王室のシリントーン王女も熱帯林激減を憂いており、王女自らかかわっているプリンセスプロジェクトの一環として「リグリーンムーブメントRGM」を1991年に認められた。
土地に昔からある樹木の種を採取して苗を育て、数種類の苗を混載する生態学的アプローチで環境保全林を育成するための植林をしている。当初個人からの寄付で賄った。毎年雨季の始まる6月初旬に日本人ボランティアと植栽地の村民や小中学生、国境警備隊員など平均500人で植林している。今年で27年目。最初のころ植えた地域はすでに熱帯林になっていて、人工衛星から緑が確認できる。
熱帯林を再生する運動(RGM)の27年
1991年からタイのシリントーン王女様が推進しておられるプリンセスプロジェクトの管轄に、熱帯林を再生する運動(Re-Green Movement:RGM)を認可していただき、毎年生態学的アプローチの植樹祭を企画・実行してきました。日本人の立場はボランテイアとして植樹のアドバイザーとしての役割です。植樹は主に国境周辺の熱帯林が破壊された場所で、村人、学校生徒、国境警備隊、森林局などのタイ人約500人と毎年一緒に植樹を続けて来ました。
我々の植林は再び伐採して木材を得るのが目的ではなく、洪水、土壌流出、干ばつ、地下水枯渇などの災害から国土を守る環境保全林を再生するのが目的です。決して再び伐採しない植林です。植樹の方法は、昔からその土地に生育していたネイティブの樹種を15ないし20選び、苗木を育て、1平方メートルに3本から5本と混植・密植します。生態学的に競争と共存を利用して可能な限り早い成長を促すもので、元横浜国立大学におられた宮脇昭先生が開発した植林方法です。
RGMは口コミ以外宣伝したことはないのですが、口コミで知った雑誌社や新聞社が取材をして記事を書いたことがあったことから、社会貢献支援財団が知るところになり、図らずも今回の受賞になりました。早速タイのプリンセスプロジェクトのオフィスにも受賞のことを報告したところ、シリントーン王女様も喜んでおられるとのことでした。
2011年は日本では東日本大震災が起こって大変な被害に苦しみましたが、タイでは未曽有の大洪水が起き、国民から熱帯林の伐採を放置したからだとの批難が沸き起こり、2015年からタイ政府は本腰を入れて植林事業を推進することになりました。私たちが進めてきた生態学的アプローチの植林方法が正式にタイ政府の植林方法として採用されることになりました。黙々と続けてきたRGMが25年後にタイ政府の目に留まることになったことは嬉しいことですし感激をしています。この思いを今回受賞した社会貢献者賞を日本のボランテイアとしてタイでの植樹祭に参加してくれた仲間だけでなく、タイのシリントーン王女様を始め多くのタイの人たちと喜びを分かち合いたいと思います。
私は現在78才ですが、プリンセスプロジェクトに認可された事業は一生続けなければいけないとタイの人に言われております。王女様が日本に来られて帝国ホテルにお泊りした時にランチに招待されたことを思い出しました。帝国ホテルでの受賞式ではシリントーン王女様が見守って喜ばれているような感じがしました。ボタンテイアの仲間も数人受賞式に参列してくれました。タイ大使館のバンサーン大使も参列してくれました。沢山の方を代表して私が受賞しましたが、地道に愚直にこれからもタイでの植樹を続ける勇気をもらいました。
沢山の社会貢献をしている方々にもお会いできました。社会貢献支援財団の素晴らしい支援活動に敬意と感謝の意を述べたいと思います。