社会貢献の功績
特定非営利活動法人 アジア眼科医療協力会
1972年からネパールを中心としてアジアの貧しい地域で眼科医療の活動を行っているNPO法人。医師が現地に赴き仮設の医療現場等で目の手術を行うアイキャンプの実施、人材育成、新しい医療技術と医療機器の導入、眼科病院の運営・支援を行っている。故黒住医師によって始められた。兵庫県西宮市に拠点を置く。これまでにネパールとインドで1万人以上の人が光を取り戻した。
「誰もが自分や家族以外の見知らぬ人のために、ひとつだけ思いをかけることができたら、世の中は少しずつ良くなりますね。」当会の創設者のひとりである黒住格は、眼科医であると同時に児童文学作家でもあり、人々に暖かい眼差しを向け続けていました。盲人福祉会の第一人者・岩橋英行が、1971年正月に新聞掲載された随筆「私の初夢」の中で、「失明発生率が世界で最も高いアジア諸国に日本から医療チームを派遣しては」と提言しました。この提言に黒住が呼応したことから、当会が誕生しました。
世界保健機関によると途上国には失明者が約4千万人います。医療者不足、貧困、交通アクセス不良、知識不足などで眼科医療に辿り着けていません。失明者は家族や社会の負担となり更なる貧困を生む負の連鎖を招くことになります。失明原因の半数は白内障であり、日本では治療可能な疾患です。
そこで当会では下記のような活動を行ってまいりました。
- アイキャンプ:医療過疎地に眼科医療チームが赴き、失明者に白内障手術を施す活動です。ネパールに1972年から2014年まで、インドのチベット難民居住区に2000年から毎年、医療チームを派遣し、累計1万人以上に白内障治療を中心とした手術を無償で施行してきました。
- 人材育成:途上国の医師や看護師、医療技術者に手術指導や機器管理の実技指導、講義を行ってきました。日本や海外への留学研修を40名以上の医療従事者に提供してきました。また、2007年から3年間、国際協力機構(JICA)と協働で草の根技術協力「ネパールにおける眼科医療システム強化プロジェクト」を行い、ネパール語の眼科教科書を作成し、ネパール全体で眼科医や保健師に眼科基礎教育を行ないました。
- 眼科病院の支援:1988年に日本人眼科医をネパールのケディア病院に長期派遣して、病院の運営や支援活動を行いました。1997年にはネパールでも最貧地区であるゴールに24時間テレビチャリティ委員会と協働でゴール眼科病院を建設して眼科医療だけでなく、病院運営面でも関わり自立まで支援をしました。現在ではケディアとゴールの両病院で年間1万5千件を超える手術を行うまでになりました。
- 医療機器の寄贈:眼科検査機器、白内障手術装置、レーザー治療装置などを必要とするネパールやインドの病院に寄贈しました。
当会は、ボランティアという言葉が一般的でなかった半世紀近く前に生まれ、黒住の「もし自分があの国に生まれていれば」という姿勢は、共鳴する会員に世代を超えて受け継がれています。時代の趨勢でODAとNGOの担うフィールドは接近してきていますが、ODAで賄われない隙間を埋める活動も必要です。この度は、受賞の栄誉に浴し身に余る光栄に存じます。今回の受賞を機に今後も身を引き締め、途上地域の失明減少を目的とし、当会の精神を若い世代に引き継ぎつつ、地道ながらも活動を継続していきます。
アジア眼科医療協力会 一同