社会貢献の功績
特定非営利活動法人 全国視覚障害児童・生徒用教科書点訳連絡会
東京都新宿区の日本点字図書館内に拠点を置き、一般の小中学校で学ぶ視覚障害児童・生徒の教科書・教材を点字化する活動を行っている。盲学校で使用する教科書は、点字出版所が作成した全国統一の一種類だが、一般校では地域によって教科書が違い、それぞれの児童・生徒独自の多種多様な教科書を点字化せざるを得ない。点字出版所だけでは対応が難しく、点字出版施設や点訳ボランティア団体などが集まり2005年に会の発足に至った。毎年、点字教科書作成の実態調査も行い、2回の研修セミナーも開催している。現在30以上の施設やボランティア団体などが会員となり活動している。
第49回社会貢献者表彰式典におきまして、私どもが表彰されましたことはたいへん光栄であり、今後の活動にとって大きな励みになりました。正に私どもと同じく表彰されました他団体のように、私どもも功績を挙げながら、社会的に報われる機会の少ない団体そのものでございます。このような私どもの活動に、灯をあててくださいましたことに感謝いたします。
人が成長し、社会の中で業績を挙げるためには、その基礎にしっかりした教育があることは疑う余地がありません。視覚障害児童・生徒にとっても、それは同じことです。
その教育で、欠かすことができないのは教科書の存在です。全国にある盲学校では文科省が製作費を出し、プロの点字出版所が作った点字教科書が提供されています。
しかし、国連の障害者権利条約で保証されているインクルーシブ教育で教育を受けている視覚障害児童・生徒には、点字教科書はまったく保証されていないというのが、わが国の実情です。盲学校の場合は、たくさん出版されている検定教科書の中から1冊を選び、それを点字化して全国で使用しています。しかし、インクルーシブ教育ではそうはいきません。地域の教育委員会が、それぞれ独自に選んだ教科書が使われています。盲学校用に選ばれた教科書と一致する例は、ごくわずかです。したがって、それぞれ個々に点訳してもらわなければなりません。その点訳を引き受けてくださっているのがボランティアです。
それに対し、文科省はわずかな謝金をボランティアに支払うだけで、抜本的な対策は講じていません。公的な保証が大前提になる教育の分野で、ボランティアの善意に頼らなければならないというのは、あまりにも大きな矛盾と言えます。しかし、国が放置しているからといって、インクルーシブ教育で学ぶ盲児童・生徒の点字教科書を放っておいていいわけがありません。矛盾を抱えながらも、インクルーシブ教育を成功させようと努力しているのが私どもです。皆様のご理解、ご援助を切にお願いいたします。
全国視覚障害児童・生徒用教科書点訳連絡会
理事長 田中徹二