社会貢献の功績
德田 竜之介
熊本市で動物病院の院長を務める德田竜之介さんは、東日本大震災の視察で、災害時にペットが置き去りにされていた現状に、日本でのペットの扱いが欧米に比べあまりに劣っていて、災害の際の対応がまったく想定されていない事を痛感。自身の経営する同市内の動物病院を、耐震構造で、専門学校と病院を併設する、西日本一大きな動物病院に建て替えた直後、熊本地震が発生した。発生直後から、SNS等で受け入れを表明。日が経つにつれ、避難所で肩身の狭い思いでペットと一緒に過ごしていた被災者が噂を聞いて次々と訪れるようになった。1週間断水する中、学生やスタッフの協力もあり、延べ1,500人の被災者と1,000匹のペットを保護した。徳田院長は、熊本県下の避難所のペットをボランティアで往診する中で、動物と飼い主が一緒に避難する方が、人にも世話や散歩を通じて、身体・精神的に大変癒しになり、守るべきペットがいることは生きる力になり、ストレスを和らげることを実感し、同伴避難所の必要性を確信し、ペット同伴避難所を25%確保すること等を要望する署名を34,000集めた。また、日本のどこでも災害時には、必要な薬品等迅速に届けられるよう、熊本災害動物研究会を発足し、現在18の動物病院が賛同し、独自で横の繋がりを作ることに尽力されている。徳田院長は、日本でもペットと動物の関係は昨今大きく変わってきている、ペットに支えられている人が多くいることも踏まえて、災害時には弱者として対応することが必要と考えている。
この度は栄誉ある賞を拝受し、身の引き締まる思いです。
しかしながら、この受賞は私一人の力ではなく、熊本地震を共に乗り越えるために協力してくれたスタッフや、支援者の方々のお陰です。一緒に活動してくれたすべての皆様に心から感謝申し上げます。また、今回の受賞は、動物業界においても大きな一歩であり、人と動物の命が同等であることを認められた証だと、大変嬉しく思います。
私は、東日本大震災のあと、現地を視察で訪れた際に、遠く離れた場所で飼主を待つペットと、避難所で大切なわが子の帰りをひたすら待つ飼主に出会い、「この現状を何とかしたい」と強く思いました。
それから熊本へ戻り、自分の動物病院の建て替えを決意し、災害時のシェルター機能を備えた施設を4年前にオープンしました。自分自身、こんなに早くお役に立つとは正直思ってもみませんでしたが、今回多くの避難者と動物たちを受け入れることができて本当によかったと思っています。
発災当初の院内には、崩れたブロックの下敷きになった子、驚いて道に飛び出して交通事故に遭った子など、外傷性出血の動物たちが次々に運ばれてきて、騒然としていました。そのような中でも、SNSを通じて動物と一緒に避難できる「同伴避難所」として建物を開放していることを発信し、直後から多くのペット連れが集まりました。
当院へたどり着いた一人の避難者の言葉が今でも忘れられません。
「着の身着のまま、大切なわが子を抱えて、たどり着いた避難所でかけられた言葉は、「ペットは外へ…」。この子を置いて自分一人だけ助かろうなんて考えられない。」
飼主も私たちも、想いは同じでした。
それから私は、ペット同伴避難所開設を求め、署名活動を行い、34000人分の署名を国会へ提出し、被災地の第一線で活動した地元の獣医師たちとともに「熊本災害動物研究会」を立ち上げました。現在は、全国18病院とともに、今後いつどこで起きるかわからない災害に備え、情報交換や連携を行っています。
震災を経験して思うことは、日本人の思いやりと助け合いの精神は、世界に誇れるすばらしい宝だということです。震災は辛い経験でしたが、私たちの経験や反省を一人でも多くの方に伝えていくことが、私たちの使命だと考えます。
災害時だからこそ、大切な家族は離れてはいけません。なぜならば、そこには互いに支えあって生きている人と動物がいるからです。これからは社会全体が、「動物は家族の一員であり、社会の一員であること」を認識し、日本人ならではの思いやりの精神をもって、人と動物のより良い共生社会の実現へ向けて、努力することが大切です。私自身もその一人として、これからも微力ながら努力を続けていきたいと思います。