社会貢献の功績
ウィメンズセンター大阪
昭和59年から、女性の体と性に特化した様々な問題に取り組む団体として設立され、平成3年に現在の「ウィメンズセンター大阪」に名称変更し、電話相談「女・からだ110番」やセンター内に婦人科クリニックを開設した。平成22年に開設した「性暴力救援センター・大阪SACHICO」の事務局として、性暴力被害を受けた女性の支援に携っている。SACHICOは24時間体制で医療的・心理的・法的側面からの支援を行うワンストップセンターとして、3年間で電話相談10,160件、初診来所者は557人を越えている。2013年には性暴力救援センター全国連絡会を結成し、その事務局としてもネットワーク作りにも力を注いでいる。
ウィメンズセンター大阪は、1984年に発足し26年間にわたり女性であるが故の身体や性と心の不安や悩みを聴き、社会のなかでの生きにくさを語り合う活動を続けてきました。職場で、家庭で、地域のなかで自分をみうしない、つかれはてていく女性たちの姿は、男女共同参画社会の実現が叫ばれる昨今でも変わりません。自分たちで解決できる力をつけていくカウンセリングや自己肯定感を奪われた体験を語り自分をとり戻す過程をプログラムされた講座を展開していくなかで語られるなかに、レイプや性虐待、DVについての体験も多くあります。性暴力が根深い社会問題であることを実感してきました。26年前に、「女のためのクリニックをつくろう!]と発足したウィメンズセンター大阪はまさに、女性が人生で起こった、あるいは体験したことで、それからの人生をあきらめることなく、むしろ、その出来事、体験がそれからの人生を主体的に生き抜くパワーになるように、そんな思いになれるような「女のためのクリニック」をめざしたのです。また、SACHICO代表でウィメンズセンター大阪のスタッフでもある加藤治子は、阪南中央病院の産婦人科医として長年にわたり医療現場から性暴力の問題や、妊娠期間中に起こるドメッステックバイオレンスを目の当たりにして、医療関係者への「女性に対する暴力防止」にむけた研修の必要性を感じていました。
性暴力被害者として来院されなくても外性器や下腹部への違和感として訴えられることもあります。更年期障害がキツイとこられて、お話を伺うと、「自分の気持ちを無視してセックスを強要される」「避妊に協力してくれず、これ以上の子育ては経済的に無理で妊娠が恐怖でした。」など、ドメッステックバイオレンスの被害者であったことがわかることもあります。ウィメンズセンター大阪のカウンセリングでも直接被害のことを話せない人も多く、ひきこもりやリストカットを繰り返し、カウンセリングのはしごをしたあげく、「はじめて話すのですが、20代のころレイプされて以来、それまでの自分とは変わってしまった。生きている価値はないと思いつづけてきました」と打ち明ける人。結婚しているが、子どもや、夫といるのが息苦しい人は「こどものころに性的虐待をうけ、身近な人、信頼する人からだったので、だれも信じてはいけないと思うようになり、人間関係が怖い」ドメッステックバイオレンスの家庭で育ち「母は父の表情やしぐさを気にするので精いっぱいで私への性虐待にはきづいてもくれなかった」「挑発的な服を着ているお前が悪いと言われ、私のせいだ、と思っていた。どんな服ならいいのか選べない、どんな服が好きなのかわからない。」共通して言えるのは、すぐに打ち明けられる場所と人がいなかった孤独感です。
被害をうけた女性は、自分が悪いという罪悪感をもたされてしまう人も多く、自分を責め続け、人を信じられず、身体は緊張状態が続きます。いつ、危険な状態にさらされるかもしれない危機を察知するためです。それが子どものころから続くとしたら、当然ゆったりとリラックスなんて出来ません。抑圧した感情を長期間抱えれば抱えるほど、後々の人生にまで影響を及ぼします。勇気をふるい相談した機関での二次被害がさらに傷をひろげ、ますます人が信じられなくなるのです。レイプされてやっと駆け込んだ、支援してくれるはずの機関で、「レイプされる方にも問題がある」「そんな場所に行くから」「被害者なら取り乱すはず。合意ではないか」など、打ち明けたことを後悔することを防ぐためにも、病院拠点型のワンストップクライシスセンター(性暴力救援センター・大阪SACHICO)が必要だったのです。支援員は24時間体制で待機し、ホットラインにかかる女性の声を聴き、今必要なサポートを当事者とともに考えます。SACHICOを設立することをきめてからは、具体的なネットワーク作りに1年以上をかけました。被害を受けた人はなかなか病院に足を運びにくく、警察に行くかどうかも迷います。さらに法的支援がほしいと思えば一から自分で弁護士をさがさなければなりません。警察・病院・弁護士と二次被害にさらされることも少なくないのです。公的資金の援助もないなかで、医師やナース等病院関係者の負担は大きく、支援員もわずかな有償ボランティアです。交通費やその他の経費はカンパで運営されています。支援員の人員確保や研修の充実も含めて、継続するための課題は山積みなのです。初診者の年代は10代が最も多く、子ども家庭相談センターや児童相談所、非加害親、学校からは、性虐待の被害を日常的にうけている子どもの相談、診察依頼もあり、年少は1歳に満たない子からで、10歳までが多いようです。加害者のほとんどが顔見知りであり、保護者的立場の者であるため、深刻な人間不信と自己肯定感の喪失と、「心地よく感じてはいけない」「自分の身体は穢れている」「将来の夢がもてない」「身体感覚の喪失」「皮膚感覚の異常」「臭覚の異常」などが起こる場合があります。自分の身体の構造や働き、名称を学び、かけがえのない私を大切に思える感覚を育てると同時に、自分以外の人の身体や心、人生の領域をおびやかさない教育の充実がいそがれます。大切に思い合う性教育の重要性も検討の課題であるとおもわれます。日本で始めての救援センターだとマスコミにとりあげられると、全国各地から、「私の住んでいる地域にありますか?]「以前性被害にあい、今も苦しんでいる、そのときこんなところがあれば」などの声がよせられます。被害者が被害を訴える、当たり前のことができない国であることと、支援体制の欠如が被害を増大させる一因だとおもわれます。救援センターの支援員の養成を担当するウィメンズセンター大阪はSACHICOと連携し、研修会を開き、毎回たくさんの児童相談所やこども家庭センターや養護教諭、教師などの参加が多く、教育委員会の後援もいただいています。性暴力被害をなくすためには、加害者逮捕は警察庁・医療や福祉は厚生労働省、学校教育は文部科学省、男女共同参画関係の相談は内閣府と縦割りではなく行政・国の各省をこえての支援が必要なのです。長年女性のための支援を続けてサポートのノウハウをもつ民間のグループと連携し、必要なところに適切な方策と活動資金の援助などを考えていただきたい。そんななか、社会貢献支援財団から推薦のお話があり、活動を続けてきてよかった!と感激でした。帝国ホテル(一生に一度しかこれないだろうなぁ)の食事のおいしかったこと、私たちの活動紹介をDVDをつくって流してくださったり、一生分の写真もとっていただいたり、受賞者のみなさんとも交流できた、すばらしい体験でした。授賞式のあとの歓談で安倍昭恵さんが大阪に行きますよ。と言ってくださったことはこの国も希望はあると心が熱くなりました。女性がイキイキと輝ける社会の実現のために、女性の健康支援に性暴力被害の問題は重要な課題です。女性のための救急医療として、病院拠点型レイプクライシスワンストップセンターを全国に!ご協力をお願いします。賞金50万は活動資金としてつかわせていただきました。ありがとうございました。
被害にあう人は特別、私には関係ない、関わりたくないと思っている人が減っていかないと世の中は変わりません。被害者の問題ではないのです、自分の問題であることをわすれないでください。
性暴力救援センター大阪運営委員
ウィメンズセンター大阪スタッフ
高見 陽子