社会貢献の功績
カサノバ エクトル
ペルー出身の産婦人科医。言語や習慣、文化、医療システムの違いを飛び越え、外国人患者(主に南米出身)と日本の医療システムとの橋渡し役として、名古屋市内のクリニックで、スペイン語、ポルトガル語、日本語で診療している。また、名古屋国際センターにて現役医療通訳や通訳を目指す人にセミナーなども行っている。
私はペルー出身の医師で、日本の医師免許を取得後、愛知県そして岐阜県の医療施設にて産婦人科医として20年以上医療に従事してきました。日本の東海地方にはブラジルやペルーなど南米出身の外国人が非常に多く、特に愛知県は現在、6万人近くの南米国籍の外国人が住んでいます。私は、スペイン語、ポルトガル語、日本語で診療を行っておりますので、ポルトガル語圏のブラジル人や、スペイン語圏の人々、ペルー人、コロンビア人、アルゼンチン人、チリ人、パラグアイ人、ボリビア人など様々な国籍の患者さんも診ています。
私が日本で医師として働き始めたころに比べると在日外国人は増え、日本語で話すことができる人も増えてきています。しかし、医療用語は難しく、医療機関での日本語によるコミュニケーションは、外国人患者さんにとって大変な問題になっています。コミュニケーションギャップのある患者さんには、日本で病気になった時の不安や不自由が大きいと思われます。
外国人の診療は、日本人の患者さんよりも時間がかかってしまいます。南米は教育水準がまばらで、日本ではほとんどの人が小、中、高、または大学までの教育を受けていますが、南米では、小学校しか行っていない人もたくさんいますし、貧富や教育水準等、個人間の差が激しい状況が続いています。健康に関しても、とても詳しい外国人患者さんもいますが、癌なのか、更年期なのか、何がなんだかわからない等、健康に関する基礎知識が全くない人も少なくありません。私はできるだけ医療の内容を説明して、外国人にも日本人にも変わらない医療を提供できるよう努力しています。文化が違い、言葉も違い、考え方も違う。どのような症状があり、どのような薬が必要なのか、訴えをじっくりきいて、少しでも患者さんの不安を軽減できるように努めています。
日本と外国では、医療システムに異なる点がいくつかあります。まず、日本のような、国民または社会保険制度は南米には存在しませんので、日本に来る外国人が保険の加入義務やシステムそのものを理解していないため、保険未加入の外国人患者さんが多いです。病気になったり、事故に巻き込まれたりした場合は医療費の負担が重く、自費になると医療費が払えない患者さんが多くみられます。
薬の処方にも違いがあります。日本では医師の指示により薬がもらえますが、外国では処方箋がなくても、ピルや抗生物質まで一般薬局やキヨスク、新聞や小物等を扱う路上販売店でも買えることがあります。海の向こうにいる家族がかかりつけの医師から処方箋をもらい、日本にいる患者さんに薬剤を送っているケースもあります。保険に未加入の患者さんにとって受診料だけじゃなく、薬剤料が高いのも事実です。健康診断やがん検診なども、きちんと受けていないことが多いです。普段特に悪いところが無いから、健診を行う必要がないと考える方が多いようです。
勤務先のクリニック以外でも、外国人医療を支えている人々と共にありたいと考え、微力ではありますが、現役医療通訳者や外国人医療の勉強をしている方達へ向け、医療の分野でセミナー等も行っています。私は診察室で、患者さんの母国語を使ってコミュニケーションをとっていますが、患者さんは病院の受付、検査室、電話等でも常にコミュニケーションが必要で、困ってしまうことがあります。そのために通訳者の協力が重要となります。その他、愛知県の特定非営利活動法人・外国人医療センター(MICA)の活動にも参加させて頂き、外国人対象の無料健康相談会にも協力しました。
今後とも診察室内のみならず、日本で暮らす外国人が、少しでも笑顔で暮らしていけるよう、偏見や言葉の壁を越えるサポート、日本との懸け橋になれるよう頑張っていこうと思っています。この度はこのような素晴らしい賞をいただき誠にありがとうございました。
医療法人葵鐘会 ロイヤルベルクリニック・フォレストベルクリニック
カサノバ エクトル