社会貢献の功績
社会福祉法人 風舎
宮崎県日向市で、天然酵母のパンなど素材にこだわった食べ物づくりと販売を軸に、知的障害者や自閉症の人を支える活動を21年にわたり続けている。施設長の溝口氏は兄に知的障害があったこともあり、福祉の道を志した。福祉施設での仕事を経て、兄を受け入れるためにも何かしなければと1992年「パンとやさいの店風舎」を開店した。店は後に小規模作業所から社会福祉法人となり、「知的障害者通所授産施設 風舎」となった。また、グループホーム、ケアホームなども開設し、生活介護事業者「風舎 つるまち」ではちんどんパフォーマンスの練習を重ね地元のイベントに出演したり、アートでの社会参加を目指して絵画などに取り組んでいる。施設長は、障害者が社会に出てトラブルに遭った時にどう難局を乗り越えられるか、そうした力をつけるため「(障害者)目の前に大きな石をおく」という方針で、障害者が望む地域で普通に暮らせる社会を目指している。
「風舎が社会貢献賞にノミネートされた。」「何かの間違いでは・・・?」
嘘のようなほんとの話に現実感を覚えるには私にとって時間が必要でした。
表彰式が近づくにつれ、社会貢献賞をいただく意味の大きさが理解できるようになり、「これは、これからが大変だ!」と思うようになりました。
1992年、日向市の街中に「パンとやさいの店」を開設以来20年以上、「障害のある人々にとって住みよい社会が、生きとし生けるもの全てに生きやすい社会」と信じて疑わず、私たちが住むこの地域で障害者が安心して暮らしていくために必要なことを、少しでも整備していかなくては、そのために微力ながら力を尽くしたい。その一念で、がむしゃらに前ばかりを見て走ってきて、今、ここにその20年に対して評価をいただいたこと、そしてその評価の価値が今後問われてくるだろうという予感。考えれば考えるほど、緊張感と責任感で身震いします。
私たち風舎がやっていることといえば、12月はクリスマス。風舎の就労継続支援B型事業所では、毎年この月になるとドイツのクリスマスパン「シュトーレン」の製造と販売に追われます。今年は目標3000本の売上を目指しています。37人の利用者と10人のスタッフが、ボランティアさんの力を借りて、毎日遅くまで頑張っています。目標達成が利用者の賞与の額に影響するので、皆必死です。
生活介護事業所では、この季節はクリスマスや新年をテーマにした作品づくり、また、冬の賞与を使って一人で買物。今ではすっかり風舎の冬の光景になりました。
グループホーム等では、クリスマスやお正月と続くイベントよりも、今日飲みに行くところが優先する人たち、しばらく家族と暮らすための準備に余念がない人たち、1月以降のイベントの日付が何より気になる人たち、様々な顔が賑やかに同居生活を作っています。
風舎の理念「誰もが望む地域で普通に暮らせる社会を目指す。そのために生きる力を育む。特に、伝える力・移動の力・体力」を柱に、利用者の夢や希望を架けて様々なプログラムを提供できるように、スタッフが一丸となって研鑽しています。
風舎の43名のスタッフたち、この人たちこそ風舎が一番誇れる財産であり、彼らが重労働・低賃金の中を共に歩んでくれた事実が、この度の賞をいただく栄誉の源としてあると、しみじみ思います。
思えば、法人設立以前から、利用者やその家族はもとより、素人が作ったパンを毎日食べて下さっている地域の方々、常に温かい目線で見守って下さっている行政や企業の方々、遠方から近くから、有形無形で支援をして下さっている方々、実に多くの人々に支えられての現在の風舎であることを、「社会貢献賞」という真に誉ある賞をいただいたことで、改めて感謝の思いを胸に深く刻み、これからは、今まで以上に障害福祉に寄与していきたいと胸が熱くなりました。
社会福祉法人 風舎 溝口 祐子