受賞者紹介

平成24年度

東日本大震災における貢献者表彰

みやぎえキスプレスかぶしきがいしゃ

宮城エキスプレス株式会社

(宮城県石巻市)
宮城エキスプレス株式会社 代表取締役 宇都宮博行
代表取締役 宇都宮博行

石巻港で水揚げされた鮮魚を都市部にトラックで運送する同社は、津波により冷蔵設備などと事務所を総て失った。社長は10人程いた従業員とともにトラックの駐車場と整備場を兼ねた県道沿いの高台に避難すると、そこに200名程の避難者が集まってきた。高台から流されて屋根にいる人、流される車にいる人、10名以上を可能な範囲で従業員全体で救出、流れ着いた食料品を分け合い、保冷車に積んでいた海産物を提供するなどして食いつなぎ、ドラム缶製のストーブで暖をとり避難所に入るまでの3日間、集まった200人程の人を世話した。公的な援助物資は1週間後に1度届いただけだった。その後も50名程の人が1ヶ月そこにとどまった。

推薦者:公益財団法人 社会貢献支援財団

平成23年3月11日、歴史上、経験したことのない大地震と大津波の発生。私どもの会社は、北は岩手県の宮古市や釜石市、南は福島県相馬市まで三陸海岸沿岸部一帯へ、海の幸を運ぶ長距離の運送屋でございます。地震発生時のちょうど14時46分。荷積みも終えて関西・中京・北陸方面のトラックも出発し、お昼にしようとしていた時でした。

当社は、海岸より300mの所に鉄骨3階建の冷蔵庫と事務所があります。冷蔵庫の外壁がくずれ、地震の大きさよりも揺幅が非常に長く感じられ、これでは「津波!」が来ると…身の危険を感じました。「すぐに避難しないと」と常務(息子)。とにかく、社員を会社の整備工場兼駐車場(500m先の小高い場所)に各自、自分の車で避難するよう指示を出しました。社内のトラックやフォークリフトはそのまま車庫内に並べて、全員非難することが出来ましたが、一人だけ自宅に帰ったため、津波にのまれ帰らぬ人となりました。

トラックは、大型、中型、リフトを合わせ50台ほど、約1時間後に到着した津波に、社屋、冷蔵庫とも壊滅的に破壊されてしまいました。整備工場に向かう途中は、渋滞し混雑していましたが、なんとか波が来る前に、全員整備工場に、着いたと思いました。
地震から1時間後位だったでしょうか。津波が襲ってきた時は、従業員一丸となり、流されてきた人や車の中から助けを求める人を、腰まで水の中に浸かりながら、15人〜20人位は、助けたと思います。高校を卒業し入社したばかりの従業員達が行った、人命救助活動には本当に感謝したいと思いました。避難場所としての高台は、当整備工場しかなかったため、避難者は約200名程いたと思います。身体中ずぶ濡れの人、怪我人、老人、子供と高台から流れる様子を愕然と見ることとしか出来ませんでした。

通信機関は途絶え、家族の安否も確認できずただただ身体中震える思いでした。そんな不安の中、私も駐車場内にあるトラックを全部暖を取る様指示し、トラックの荷台も開放し冷蔵車を暖房にして会社内にある毛布、作業服を着せたり、ドラム缶で火を焚いて過ごすことにしました。怪我人、子供、老人はマイクロバスが1台あったのでここで休ませ、とにかく救護を頼まないと思い夜遅くヘリコプターが飛んで来たので皆で携帯電話の明かりで合図をするも目の前まで来ても救護することが出来ませんでした。

2日目にはやっと自衛隊にて搬送することが出来たしだいです。食事はトラック内にあった冷凍食品や工場の近くにあった食品店のカップラーメンとかで食事をし、水は地下水からくみ上げることが出来ました。200名ほどいた避難者も何とか歩いて家の安否の為に徐々に帰宅していき、避難所の役割を終えるまでに1か月位かかったと思います。

震災から1年になりますが、避難して命を助けて頂いたと御礼に当会社まで足を運んでくる人が今でもおられます。

現在の状況ですが、まだまだ復興の兆しが見えて来ているも、がれきや倒壊した家々の解体が順次に施工している状態です。当社も冷蔵庫と事務所を解体し、5階建の5000tの冷蔵庫とHACCP対応の配送センター設備と、今回の震災を踏まえて防災の避難所、ヘリコプター離着陸の設置、供養の為に千手観音の供養塔を作ろうと思っています。現在国の補助金を利用させて頂き、3月30日には地鎮祭を執り行うことになりました。今回は、石巻の発展、復旧・復興の為に震災前以上に石巻ブランドである新鮮な魚介類を信頼を乗せて全国どこへでも輸送したいと思います。

また新聞、マスコミに取り上げて頂いた時は私達社員共々元気で生きていることをお知らせ頂いたことは大変ありがとうございました。世界、全国の自衛隊やボランティアの皆様方もこの石巻に逸早く入って頂き、多大なるご支援を頂き感謝にたえません。

この教訓を活かし、命の大切さ、人との絆を後世に語り伝え、当宮城エキスプレス株式会社も絶えることなく頑張っていきたいと思います。ありがとうございました。

  • 新社屋の完成写真と共に
  • 河北新報2011年6月2日