受賞者紹介

平成24年度

東日本大震災における貢献者表彰

ちほうどくりつぎょうせいほうじん
みやぎけんりつびょういんきこう
みやぎけんりつがんせんたー

地方独立行政法人 宮城県立病院機構 宮城県立がんセンター

(年齢住所)
地方独立行政法人 宮城県立病院機構 宮城県立がんセンター 総長 西條 茂
総長 西條 茂

3月11日震災当日は、近隣の市民約1,000名が避難して来たため、その対応にあたった。二日後から名取市医師会、宮城社会保険病院と連携を組み、宮城社会保険病院のチームと分担して市内の避難所(ピーク時には40ヵ所以上、1万人の市民がいた)を3月25日まで毎日巡回診療した。また名取市休日急患センターにて3月27日まで名取市医師会の会員と診療を行い1058名の患者を診療した。この間、病院では24時間オープン体制で救急患者の診療を行うなど、震災時の市民の医療に多大な貢献をした。

推薦者:一般社団法人 名取市医師会 会長 丹野 尚昭

このたびは栄えある賞をいただき、宮城県立がんセンター職員一同、大変嬉しくまた光栄に存じます。これを機に医師会および行政と連携し、災害時医療における役割を果たすべくより一層努力していきたいと思います。

当時の状況ですが、地震直後、患者さんや建物および設備の被害状況の確認が始まり、同時に外来処置室を救急患者診察室として、院内外からの急患対応とした。ロビーのテレビからは、名取市閖上地区が津波にのまれていく悲惨な光景が映し出され、わずか3〜4㎞
先で大変な事態が進行中であることが知れた。

間もなくロビーには、避難者が集まってきたので、身元確認などの受付業務とともに寒さ対策などの対応が始まった。

病院の対策が一段落した後、名取市休日・夜間救急センターへ行き名取市の医療体制について情報を得ると、医師会の各診療所は、海沿いのいくつかの診療所が津波で流され、そのほかの診療所も機材の倒壊や職員が被災し、当分は診療不能との説明を受けた。

この状況を乗り切るには、がんセンターのマンパワーを活用するしかないと考え、がんセンターの役割を、まずは24時間対応とする。その間休日、夜間急患センターを利用し間日の診療をがんセンターが担当する、急患センター受信が難しい避難者のための避難所への巡回診療を行う、さらに避難所と急患センターおよび医療機関を巡回する市バスの手配と名取市に協力してもらうことに決めた。

この結果、急患センターでは、県立がんセンターの医師3名看護師4名薬剤師1名計8名のチームが、連日診療にあたった。

ここでの診療は土日も含め3月27日まで2週間続いたが、この頃になると、当初120名程いた受賞者数も20名前後と減少し、各診療所を診察が再開できたことが確認され、当初の目的を達成できた。

一方、避難所への巡回診療は、がんセンターの医師2名看護師3名薬剤師1名を1チームとし2チームで、また宮城社会保険病院のチームとも連携し、震災翌日から連日2週間行われた。

また、震災直後には、研究所の先生3名が、学校の体育館で行われている検死に参加している。現在、名取市で約900名の死者・行方不明者となっている。

今回の経験から、大震災時には、通常の通信手段は遮断されること、超急性期の救急医療は地元完結型でしかできないことが解った。

そしてこれらの反省から、医療関係者は、災害の状況に応じて、どこでどのように医療活動をすべきか、たとえ指示がなくても自ら判断し行動できるような現実的マニュアルと、それを実践できる体制づくりを、行政とともに作っておくことが必要と考えている。