社会貢献の功績
中村 寬子
マリアの宣教者フランシスコ修道会という宣教会に属している私は、世界のどこでも遣わされた処で、神と人々への奉仕に献身することは当然の事と思っていた。日本を離れて 32 年間、主にアフリカで、風土に慣れ、風俗にとけ込み、人々を知り、愛されて意義のある、張り合いのある生活をさせて戴いていると感謝していたそんな矢先に、社会貢献者として表彰を受けることにとまどいを感じていた。
しかし良く考え、この 32 年間を振り返った時、どれだけ多くの助けを求めている人々と出会い、関わり合いを持ち、その人々を助け支えるために、想像も至らない多勢の日本の方々と連帯の共同の仕事をして来たという思いに至り、その方々に感謝するために表彰を慎んでいただくことにした。
アフリカの戦争、動乱、貧困、飢え、危険の中で私がどんなに一生懸命全力を尽しても、私の力は微々たるもので、何も変えられるものではなかった。私が自分の使命を自覚できていったのは、曽野綾子様を代表とする海外邦人宣教者活動支援後援会(JOMAS)との出会いとその後の支援のおかげである。
私の仕事はコンゴ民主共和国の現状と緊迫した必要を知ってもらい、ひたすら国と住民の無力さを訴えることである。JOMASはじめ日本の数知れない方々が私の訴えに耳を傾け、貧しい人々の苦しみに共感して下さった。身体障害者の小学校にバスを寄付してもらったおかげで遠くの子供も学校に通えるようになり、その子たちの未来が開けて来た。エイズや戦争のどさくさで多くの孤児が出た。悪魔付きとのろわれて路上に捨てられた子供たちも、安全な家を建ててもらった。
広いコンゴに点在して不便な中、医療活動するシスター達には悪路をものともしない四輪駆動の救急車が贈られ、多くの命が救われた。戦争で森へ追われていた子供達が落着いて勉強できる校舎を建ててもらい、100人足らずで始まった小学校が初めての卒業生を出した昨年には、三棟の校舎の生徒数が1,000人にもなっていた。
田舎の子供達が、私もうらやむ程に流暢なフランス語を学校でも家庭でも使っている。医療状態の向上のため看護士大学の建設等、特に未来につながる多くの支援をいただいている。そして最新の意義あるプロジェクトは、主都キンシャサの中にあって僻地のような人工32万人の貧しい地区に小さな診療所はいくつかあるが、初めて手術と入院設備のある病院の実現のため土地購入、建築、設備にいたるまで一切をJOMASを通して数知れない日本人が寄付して下さり長年苦しんでいる人々の夢がかなえられるのである。
大きな団体の資金からではなく、遠い距離を越えて人々の心のつながりが大きな事を実現していくのはまさに奇跡である。宣教者として私はコンゴと日本の人々のかけ橋として使っていただきたいと感謝をこめて願っている。
受賞の言葉
私は今、アフリカの中部、コンゴ民主共和国の首都キンシャサで同じ修道会の 30 人のシスターたちと生活しています。コンゴ、アンゴラ、ベルギー、スペイン、ペルー、ポーランドと私、日本人の国際色豊かな修道院です。此の度の受賞を姉妹たちは、コンゴの紹介とこの国で宣教師たちがどのように奉仕活動をしているかを知っていただくよい機会になると、我が事のように大喜びしてくれました。