社会貢献の功績
秋山 正子
1990 年に実姉の末期癌での看取り時に出会った在宅ホスピスの実践に啓発され、1991 年から訪問看護に携わるようになった。はじめはいろいろな方に教えを請いながら、そのうちに地域の中で、積極的にがん末期の方の在宅ケアに取り組んだ。
がんの方のみならず、あらゆる病気や、障害を持った方々に、病院ではなく家庭で、また、この頃は自宅ではないけれども、終の棲家と定めた施設でも同じ様に訪問看護を届けたいと思い、新宿区で活動を続けてきている。
この間、様々な制度の変遷があり、また、活動の母体も、医療法人に属していた所からその法人解散という事態で、独立して会社を設立し、訪問看護の受け手の方々に変わらずに看護を届けたいと活動を続けられるようにした。
この18年間、多くの方の看取りに訪問看護師として関わらせていただいた。お一人お一人の人生の最後の場面に出会うことは、その方の「いのち」を物語として受け継ぎ、次ぎの世代へ語り継ぐ役目を負ったということだと思わされることも多々ある。
現代日本では、病院の中の死が一般的である。最近でも13.4%しか病院以外、つまり在宅死は見られない。家で亡くなるという事は、多くの場合、家族に見守られ、あるいは親しい人に囲まれて亡くなっていく事で、人々の希望に沿った亡くなり方であるが、介護力の問題などもあり理想と現実はかけ離れている。また、地域の医療体制もまだまだ十分に整備されていないため、退院できずにあちこち 転院せざるをえない現状もある。
こういった中で、訪問看護を必要とする方は多く、そのニーズに応えるべく後輩を育てながら訪問看護実践を続けてきた。まだまだ十分とはいえない現状があるので、今度は少しでも、地域の中で在宅医療のネットワークの充実を図り、一人でも多くの方が家で療養したり、亡くなったりという希望が叶うようにと活動を広めようと地域での在宅療養シンポジウムなどを実施するようになった。
2006年にはNPO白十字在宅ボランティアの会を設立し、在宅ケアの中にボランティアが活躍できる場を増やし、且つ、在宅ケアに携わる訪問看護師に対しても側面から支援が得られ、ひいては在宅ケアの受け手の患者さん・ご家族の生活が豊かになるようにと、少しずつ活動の場と和を広げている。
今回の表彰を有難く、真摯に受け止め、多くの方の「いのち」に寄り添ってきた活動を今後も続けていこうと思っている。
受賞の言葉
家族の看取りをきっかけに、在宅ホスピスケアに取り組み、今日まで続けてこられたことに対し、訪問看護の道をめざし、日々精進を重ねている多くの同道の方々とともにこの社会貢献賞をいただいたと深く感謝いたします。まだまだ知られていない訪問看護や在宅ケアの中の医療を地域の人々にもより多く知っていただき、1人でも多くの方が病院という選択肢しかないのではないと「家に帰れる」思いを支えて、活動を続けていきたいと思います。