社会貢献の功績
Mr. Boun Mao
2000年(平成12年)ブン・マオさんは、初めてカンボジアで盲人協会を設立し、カンボジア全土の盲人と視覚障害者の自立と社会参加のために貢献してきた。
盲人協会が運営する盲人センターでは様々な職業訓練やコンピューター研修などを実施しており、多くの人々に利用されている。また地方の視覚障害者に対しても職業訓練、自立生活訓練(身の回りの家事の仕方など)、そして養豚や養鶏などを行なうために必要な小規模の貸付、眼病などの診断や治療費の問題など、様々なサービスを提供している。
これらの活動により、カンボジアの視覚障害者の生活は以前と比べて飛躍的に向上した。今までほとんど社会に参加することができなかった人々が職業訓練やリーダーシップ研修に参加したり、盲学校で基礎教育を受けるなど日々の生活がここまで前進したことは大きな成果である。
ブン・マオさんは大学3年の時、オートバイ・タクシーのアルバイト中にバイク強盗に襲われ、バッテリーの硫酸を顔面にかけられたことが原因で不幸にも失明した。事故当初は目、鼻、口全てが変形していた。その後、ドイツや日本の医師によって整形手術を受けるが、視力が戻ることはなかった。ブン・マオさんは人生に失望し自殺を試みるが、NGOメリノール・リハビリテーション・センターの職員との出会いで生きる希望を見つける事が出来た。センターでは歩行、英語、解剖学、生理学、日本式マッサージなどの研修を受け、この活動を通じてブン・マオさんは自信を取り戻して行った。
‘99年にはカンボジア代表として初めてON-NET(Overbrook-Nippon Network on Educational Technology 日本財団助成事業)が実施するコンピューター研修に参加する。そこでアジア各国からの視覚障害を持つ若手リーダーたちに出会い、他国の盲人の暮らしや社会的立場など、これまでに無い情報や知識を得る事が出来た。その際、ブン・マオさんは自国と他国の視覚障害者との生活の違いに大きな衝撃を受けた。
カンボジアには紛争、地雷、事故、遺伝、ビタミンの欠乏などが原因で視力を失った盲人は15万人いると言われている。当時は視覚障害者に対して厳しい偏見があり、社会参加は認められず彼らは家に閉じこもった生活を余儀なくされていた。この問題を解決する為には、社会及び盲人自身の意識改革が必要であると考え、帰国後、ON-NETのディレクターであるローレンス・キャンベル氏の指導の下、盲人たちにコンピューター訓練などを徐々に始めて行った。そして‘00年にはカンボジアで初めて盲人協会を設立し、初代の事務局長に就任し意欲的に活動を続け、組織を今日まで牽引してきた。
ブン・マオさんは、今後もカンボジアの盲人のロールモデル(模範)として、一般社会に偏見と差別をなくす活動をけると共に、盲人の生活向上を目的とした、雇用に繋がる技能訓練や地域に根ざしたリハビリテーションなどのサービスを提供する活動を続けて行く。
受賞の言葉
今回は、社会貢献支援財団より日本財団賞の表彰をいただき大変光栄です。カンボジアの盲人を代表して、社会貢献支援財団と日本財団にお礼申し上げます。社会貢献に尽くしておられる多くの方々に希望を与えるこの素晴らしい表彰式が、これからも継続されることを望んでおります。今回の受賞を機に、カンボジアの視覚障害者に生きる希望を、そして笑顔で暮らせるような社会を実現させるために尽くしてまいります。