社会貢献の功績
Mr. James J. DeCaro
ジェームズ・デカロさんは、日本財団、NTID(ロチェスター工科大学内国立聾工科大学)、筑波技術大学のパートナーシップにより結成されたPostsecondary Education Network-International (PEN-International)のディレクターという大役を2001年(平成13年)の設立から今日まで務め、世界中の高等教育機関に通う聴覚障害学生の情報アクセスを確保するために多大な貢献をしてきた。
PEN-Internationalには米国、日本、中国、ロシア、フィリピンなどの加盟国が参加しており、各国の大学がPEN-Internationalを通して聴覚障害学生の教授法を学び、それぞれの大学で導入していく仕組みになっている。この先駆的なネットワークは、国内外の教育機関や聾者団体などから高い評価を得ている。
日本も本事業を通して大きく成長した国の一つである。今まで国内の大学のごく僅かでしか行われてこなかった聴覚障害者の高等教育への支援が少しずつ広がり始め、2004年には「日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク(PEPNet-Japan)」が設立された。
現在、16団体(大学・機関)が加盟している。筑波技術大学が中心となり、PEN-Internationalと同様にノウハウを必要としている大学に対して研修やシンポジウムを開催し情報発信などを実施している。
ジェームズ・デカロさんが聴覚障害者支援に携わるようになったのは土木工学(Civil Engineering)の教授として‘71年(昭和46年)に米国のニューヨーク州にあるロチェスター工科大学(Rochester Institute of Technology)の聴覚障害者のための工科大学(National Technical Institute of the Deaf)に赴任してからである。それまでは聴覚障害の分野とは無縁だったデカロさんが、聴覚障害学生や同僚などとの交流、また後に彼の伴侶となる女性(聴覚障害者を両親に持つ健聴者)との出会いによって聴覚障害者と聾文化に興味を持つようになり、今では聴覚障害者への情報アクセス支援の分野では先に出るものはいない。
米国では障害者法(Americans with Disabilities Act)が施行されて以来、聴覚障害者に対する情報アクセスに対する環境は改善されてきた。しかし、まだ世界の多くの国では聴覚障害者に対する情報提供やアクセシビリティーはほとんどなく、これが彼らの社会参加とエンパワーメント(権限を持つこと)の妨げになっていることは無視できない。
「世界の聴覚障害者のエンパワーメントに積極的に貢献したい」という思いが彼を本事業の考案へと導いた。デカロさんはもうすぐで定年を迎えるが、世界中の聴覚障害者がエンパワーメントを勝ち取るまで現役時代と変わらず全力で活動を続けるという。
受賞の言葉
聴覚障害ゆえに多くの聴覚障害者は社会の恩恵から隔離されていました。高等教育を通して知識や技術を身につけ、就労や社会参加の機会を促そうという目的から、PEN-International(聴覚障害者のための国際大学連合)を結成しました。その結果、教育機関の連帯が促され、当事者が自信を抱けるような教育が可能になりました。今回の受賞を機に、中等教育の分野へとネットワーク拡大していけるように邁進していく所存です。