社会貢献の功績
加藤 正美
加藤さんは1926年(大正15年)、ペルーのリマ市生まれのペルー日系二世である。お父さんは愛知県豊橋市、お母さんは静岡県湖西市の出身である。排日運動のさなかにペルーで教育を受け、苦労しながら日系人司祭になった。青年時代に‘47年から‘54年の間カナダのケベック州で修道生活をしながら哲学と神学を学び、‘55年には日本の大学や病院などで勉強や仕事をしていた。一度は日本に永住するつもりであったが、ペルーの日本人カトリック信者の要請を受け、‘76年ペルーへ帰国した。
‘80年、ペルーのリマにおいて貧しい日系人や、この頃から増え始めたストリートチルドレンなど貧しい人々の救済にあたった。‘83年ストリートチルドレンの世話と自立支援のためエンマヌエルホーム(「ホーム」)を設立するためにカナダ、スペイン、日本へ「托鉢の旅」をして資金を集めに奔走した。
「ホーム」の完成後は靴の修理屋、美容室、飼育所、畑、レストラン、パン製造工場、コンピューター教室など、「ホーム」の子どもたちの自立に向けて、教育と実践の場を与えた。
「ホーム」の設立趣旨が、地元プエンテピエドラ区役所の唯一の社会事業だったために区役所から3000坪の土地が贈呈された。
‘90年、日本政府やNGOに援助を求め、人口が増え続ける貧しい地域に新診療所、エンマヌエル医療センターを建設した。この診療所は今年18年目を迎え、目下70人の医師と12人の看護婦により毎日200~240人の患者を診察している。
‘00年、日系人を中心とした老人ホームを日本財団やJOMASなどの援助を得て建設、現在32名の日系人が平和のうちに余生を送っている。
加藤さんの夢はもうひとつ、老人ホームの住居者がアルツハイマーの兆候にあるため、アルツハイマーや寝たきりのお年寄りの為のホームを建てることだという。
加藤さんは修道者として当然のことと言うが、その人生は常にペルーと日本などの間を貧しい人々の為の資金集めに奔走し、子どもからお年寄りまで、その命に関わる問題を具体的に解決する為に捧げてきたものである。最近も日本からペルーに行き、活動をする芸術家の通訳をするなど文化面でも日本とペルーの架け橋となっている。
加藤さんは、小さい時お母さんに「任された事、始めた事は最後まで全うしろ。」といわれたことを実行しているだけだと活動を続けている。
受賞の言葉
この度の受賞を心から感謝申し上げます。百年前、日本が大変な時、ペルーの国民は快く私たちの両親を受け入れて下さいました。しかし言葉も、風俗習慣も全く知らずに移住した私たちの両親は、大変苦労致しました。その時「頼母子講」(たのもしこう)を通じてお互いに助け合って商売を始めました。この様な状況の中で生まれ育った私たちは今、厳しい状況の中で生きているペルーの子供たちを、当然のこととしてお世話させていただいております。今回このような素晴らしい表彰式にあずかり、本当に励まされました。そしてこれからももっと頑張って行こうと決心いたしました。