社会貢献の功績
佐野 昌宏
佐野さんは、静岡県の富士市で運送会社を経営している。平成8年に初めて観光でカンボジアのアンコールワット遺跡へ訪れた。 遺跡を実際に自分の目で見たいという想いで訪れたが、そこで強く心を揺さぶられたのは、同国の内戦が残した生々しい傷跡で、特に子どもたちのおかれた悲惨な状況に衝撃を受けた。それまで仕事一筋で、ボランティア活動などを自分でしたこともなかったが、「この国のために何かできることはないだろうか」との思いを強く持つようになった。
佐野さんはまず同県にあったNGOでカンボジアでの孤児院援助へ参加し、ボランティア活動を展開していった。その後、個人的な支援活動に切り換え、同国の政府からの要請もあり、11年には私費でシェムリアップ州のコンプロン・バンテアイスレーに佐野小学校を建設し、それを寄付した。アンコールワットから40Km位も離れた電気もない村である。引渡し後も学校維持のため、年に2~3回訪問している。同国には定まった学区もなく、どこの学校に行ってもよいところから、佐野さんの学校に子どもたちが集まり、500人の生徒に文房具、制服なども援助した。以前から親交のあった同国の孤児院の先生や友人のガイドの手助けもあり、子どもたちに直接手渡しするようにしている。また一方では、各地で3人の孤児の里親にもなり、彼らの成長を楽しみにもしている。
14年からは新たな学校行事として、学校から360Kmも離れた首都プノンペンへ2泊3日の修学旅行を行うようにした。日本ではお馴染みの学校行事であるが、学校の数すら満足にないカンボジアでは修学旅行など、どこの学校でも行っていない。「自分たちの村から出たことのない子どもたちの、夢や希望を大きく育てたい」そんな佐野さんの思いから、修学旅行は実施された。それまでは「木こり」や「教師」などが多かった子どもたちの夢に、「弁護士」や「医者」などの多様な答えも増えてきている。現在も年に一回、主催する修学旅行に同行するようにしている。
また、18年にはプノンペン・メトロ・ロータリークラブから遠距離通学による通学困難な子どもたちのために、日本の中古自転車の援助要請があり、自身が所属する新富士ロータリークラブの国際奉仕活動として、それに応えている。援助に当たっては、日本とカンボジアの文化の違いから意志の疎通がうまくいかず、何度も挫折しかけたが、(財)日本自転車駐車場整備センターをはじめとする多くの協力によりなんとか軌道にのせることができた。3年で合計2,530台を贈る計画でスタートしたが、21年3月までには3,680台の自転車を贈る予定であるという。
佐野さんは、「この国の一人でも多くの子どもたちの力になり、そして笑顔を見ることができるならば、自分のできる限りの努力や援助をしていきたい。」と活動を続けている。
受賞の言葉
カンボジアへの教育援助の訪問も1996年以来35回を超えるようになりましたが、この度の受賞を機会に過去の活動を振り返りますと、改めて継続の大切さを感じました。遠距離で通学困難な子供達に中古自転車を贈る事業では、財団法人「自転車駐車場整備センター」様、各地区ロータリアンの皆様にこの場を借りてお礼を申し上げます。これからも、子供達に夢を与えられる修学旅行など自分のできる範囲でやってきた事を続けて行きたいと思います。