社会貢献の功績
雨宮 清
平成6年雨宮さんは、商用のため訪れたカンボジアの首都プノンペンで地雷の被害に遭った人々の惨状を目の当たりにした。地雷を地上から無くするために、技術屋の自分は「地雷を取り除く機械を作って、犠牲者を一人でも減らそう」と思った。これが地雷除去機開発のきっかけとなった。
帰国後、カンボジアの地雷被害の悲惨さと地雷除去機の開発の必要性を従業員に訴えたが、会社(山梨日立建機)にとって同機の開発は費用がかかりリスクの大きい話であった。結局「人のためになることは、良いことじゃないか」と従業員からも賛同を得て、翌年に開発プロジェクトチームを発足した。そしてカンボジアへ出向き、地雷原で地雷処理の現状と、除去活動を行っている人たちの協力を仰ぎ地雷について学んだ。その結果、油圧式ショベルの先端へ高速で回転するカッターを装着した除去機のアイディアが生まれた。
除去機の開発は、部品の購入代金などで多額の開発費を投入することとなった。油圧式ショベルの先端につけるブッシュカッター(高速回転カッター)は、地雷が爆発する際のおよそ1千度もの高温と硬い岩盤などに耐えられる耐久性や、草や灌木を刈り取ることが地雷処理をする上で重要なため切削性も求められた。既存の部品機材は、地雷の除去を想定して造られていないため、思ったような能力が得られなかった。そのため平成8年には自社で開発することになり、耐久性、切削性を備えた試作機が同10年4月に完成した。そして同12年には改良を加え、人の手で地雷処理をする時間の何分の一かの時間で、多くの地雷の処理をする試作の遠隔装置付きの地雷除去機が完成した。
雨宮さんは、操作する人の安全性も確実なものとするため、自分で除去機を操作し安全性を確かめることにした。しかし、プノンペンでの実験処理中の地雷の爆発の影響で、片方の耳の鼓膜が破れてしまった。この後、除去機に調整を加えるとともに地雷処理を終えた後の除去機は、地雷原だった土地を農地として利用するための機械に転用できるように工夫を加え、実用可能な地雷除去機が完成した。この除去機は現在6カ国で56台(ベトナム20台、カンボジア・タイ26台、アフガニスタン5台、ニカラグア3台、アンゴラ2台)が稼働中である。
雨宮さんは地雷の除去活動とともに世の中の一人でも多くの人に、地雷の被害や地雷除去活動の状況について、知ってもらう義務があると考え、講演会を開催し啓蒙活動も行っている。平成18年は学校関係10回、日立建機グループ11回を含め32回の講演会を行い、翌年も更に50回以上の講演会が予定されるなど活動を続けている。
受賞の言葉
栄えある社会貢献賞の授与に際し感謝申し上げます。地雷は世界80カ国以上、1億1千万個を超える数が埋設されています。年間2万5千人にも上る被害者を無くすため1995年に始めた対人地雷除去機開発は、現在、対人地雷除去のみならず地雷国の産業復興のため疲弊した土地の回復、農地の開墾などインフラ整備、農業支援活動までを行っています。これからも地雷原に住む世界の子供たちの笑顔を取り戻し、安心して暮らせる大地を復興するため挑戦し続けていきたいと思います。