社会貢献の功績
平井 廣二
平井さんは昭和52年、茨城大学学術調査隊の隊長として、ヒンズークシ山脈のウドレン・ゾム中央峰の登頂を成し遂げたほか、現地の宗教、教育などについて調査を行った。このとき現地の小学校に文具を贈ったところ、先生から「心と心が触れ合うような援助をしてもらえたら…」と要望され、「教育者として自分にできることは何か」という思いが残った。
同62年にネパール中央部を訪問した際には、子供達が自分の名前すら書けない実態を知り、教育の重要性を痛感した。多くの子供達が野外で学んでおり、文具も足りない状態であったため、「自分にできることからやってみよう」と活動を始め、平成7年に山岳部のOB会に「茨城・ネパールに学校をつくる会」を設立した。
ひたちなか市内の小・中学校で教壇に立ち、中学校長を最後に退職した翌年の同8年に現地調査を始め、老朽化の著しかったネパールのダルモダイ高校の新校舎の建設を決定した。それまでに募金活動で集まった約150万円で翌年に着工した。その後12回にわたりネパールを訪問し、現地調査を重ね、小中高8校の学校建設に携わっている。着工から完成まで2年、その後の3年間は資金援助をする5カ年計画で、お金を渡すだけでなく、何が必要なのかを考えた。ある時は寄生虫を実際に目で見させて、衛生観念をつけてもらうために顕微鏡を贈った。品物には日本製で質の良いものを選び、国外の優れた品物を知ってもらい、その物を通じて世界に目を向けてもらうきっかけにもなることを期待している。どんな援助でもテーマや宿題になるように考えている。
平井さんは「栄養や医学の知識がない母親が子育てに困ったり、計算が分らない父親が給料の計算をごまかされたりする。知識があれば、子供を6人も7人も生んで食べるのにも困り、子供を売らざるを得なくなることもなくなるでしょう。学校に行くのは知識を得るためだけでなく、命を守るためでもあるのです。だから文字を教えている教師には、命を守る使命があります」という。
平井さんの活動は、学校建設とともにユネスコ協会が主管するパタンアシュラム(母子自立施設)にいる子供達への食費援助をはじめ、マイテイネパール(人身売買で売られた子供を連れ戻し、国内で自立のための教育を行う施設)への食事援助と教育教材の支援などネパール訪問の度に広がっている。さらに日本国内では「ひたちなかユネスコ協会」としてエントリーし、平成7年から同16年の間に、茨城県で日本へ招聘している海外技術者研修員のネパール人8名をホストファミリーとして受入れている。今年も8月から、コンピュータ技術研修員1名を自宅に受け入れるなど活動を続けている。
受賞の言葉
教育を受けられないネパール山村の住民の生活は、貧困、搾取、人権、健康、食との闘いです。学校建設、教育の享受は人々の願いであり、夢です。私達茨城のNGOは、ネパールの学校建設地まで足を運び8つの学校を建設しました。この活動を止めてはいけないと思います。副賞は今後の活動資金とし有効に使いたい。