社会貢献の功績
近藤 愛子
近藤さんの活動は、ヒマラヤ登山でネパールを訪れた約30年前、貧困で子供が教育を受けられないふもとの村の窮状を知り、ネパールの子供達が教育を受けられるようにするための情報を収集するようになったのがきっかけであった。
教員を退職後、亡くなったご主人の退職金と賛同者らに募金活動を協力してもらい「ネパール子ども基金」を設立した。学校の建設地に関しては、実際に現地を訪れ本当に必要とされる場所を選定した。次にネパールの教育省に出向き、学校を造って良いのか、またその後教員を派遣し運営をしてくれるのかを確認し、平成4年に首都カトマンズ北西部のヌワコット郡の山村に滞在し、学校づくりに着手した。石積み、トタン屋根の小さな建物だが、ネパールへ出かけて住民と一緒に学校建設に取り組んだ。これまでに15の山村に小学校12校、中学2校、高校1校、短大1校を建てた。
最初のラニパゥア村シレー・バニワー小中学校は、平成7年に高等学校、16年に短大と拡張して小中高短大で1000人超える学生や生徒が通っている。この他にも、子供達のために山村にある既存の小中学校の設備の修繕や図書館を設置している。
染色家でもある近藤さんは、染色を楽しむグループ「くるみの会」の主婦ら8人で、現地の小学1年の新入生に贈る布かばん計250枚を手作りした。材料の布は8年前に閉鎖された自宅近くの工場解体時に、もらい受けて保管していたものである。年明けから草木染をし、「くるみの会」の主婦らが協力し、縦約40センチ横約30センチの小型リュックの形に縫い上げて、ひもを通して完成させた。今年も、近藤さんと基金のメンバー6人は、小学1年の新入生に贈る布かばん250枚にノートと鉛筆を入れて、子どもたちにプレゼントするため約2週間現地を訪れた。「布かばんは、250枚でも足りないぐらい。大切に使ってくれると思う」と話す。
また、現地では1人でお産する女性が多く、産婦や赤ちゃんの死亡率が高い。ユニセフの調査によるとネパールの10万人あたりの産婦の死亡率は、日本の74倍にもなっている。訪問に合わせて、村の女性から出産を手助けする人材を養成するための講習会を開くため、助産師にも同行を願い、平成17年に続き19年に2回目の助産婦養成講習会を実施した。経済的自立の手助けのため、平成7年から村の女性たちには羊の毛を紡いで草木染をし、手編みのセーターづくりを指導し、それを日本で販売するなど回を重ねるごとに支援活動が広がっている。
ヌワコット郡の山村までは、標高1800メートルの山道を登る。近藤さんは「ほかの村にも活動を広げていきたい」と張り切っている。
受賞の言葉
このたびの受賞は私のみならずご協力いただいた多くの皆様への賜わりものだと思います。16年前にヒマラヤを訪れ、ネパールの貧しさに驚き、以来ヌワコット郡内に小学校・中学校・高校・短大と図書館を建て、そのほか識字学級・学校への水道工事・植樹・女性の自立のためのセーター編み・村々での助産婦養成講習などを続けて来ましたが、振り返ってみますと、今までの私の仕事は村づくりだったと思います。このことを皆様にお伝え出来たことを心から感謝いたします。