第三分野/特定分野の功績
飯村 義海
船舶建造における電気の役目を人体に喩えて説明すると、船体は皮膚・目・鼻・血管、機関は内臓、そして電気関係は脳神経に喩えられる。船体に各種の艤装品が搭載されたら、電装工事として、艤装品と電力供給盤間、艤装品間及び艤装品と制御盤間、操舵室と機関制御及び操舵機室の間などに電線を布設する。そのために電路材を取付け、電線を布設・結線し、脳と神経系を構成する。発電機から給電することにより、機関、各種機器を動かし、目となるレーダー、GPS受信機(衛星航法装置)、耳となる無線・通信機器等々が機能して、船舶としての自己完結型の移動体となり得る。電装は、各種機器に生命を与え所定の機能を発揮できるようシステムを構築する役目を担い、ハイテクを駆使した高性能の船舶を生み出す縁の下の力持ち的な重要な役目を担っている。
飯村さんは、そのような船舶の電装工事に40年以上も従事してきた。原点である電装設計に始まり、現業での電気艤装品の取付、電線布設用電路材の取付、電線布設・結線作業を終えた後、電気を通しての各種試験や検査のすべての作業を経験し、更には培った技術・技能をもとに、設計・現場管理者及び経理責任者まで務めた。更にまた、電装工事の技術・技能継承のために後進の指導も積極的に行っている。飯村さんは、まさに現代の船舶電装工事に携わる貴重な匠の一人である。
西野さんは、繁忙を極める職場の中に在りながら職場の先頭に立ち、生産性の向上に寄与している。また従来は10年かかると言われたクランク軸仕上げ技能者の養成を、作業手順のマニュアル化などを積極的に進め、5年前後を目標に若手技能者の育成・ 電装工事の匠として、飯村さんは図面どおりの工事はもとより、図面に表れないものや周囲の状況判断による適宜な図面改正作業、複雑な制御系統の結線や試験作業および防火区画から非防火区画への特殊な隔壁貫通工事の作業要領の作成等、高度な技術的知識および豊富な経験を生かして、高性能で安全な船舶建造に大きく貢献している。また、主任船舶電装士、レーダー整備士、および航海用無線設備整備士の資格を取得し、常に技術習得と研鑽に努め、船舶電装工事の匠の領域を広めつつある。
受賞の言葉
この度は名誉ある賞をいただき心より感謝いたしております。受賞に際しご支援を頂きました関係者の方々にお礼を申し上げます。船舶の電装・進歩高度化する航海機器、電気儀装品工事などの技術向上に努め後進の指導育成に一層の努力をいたし、社会に貢献いたしたいと思います。ありがとうございました。