第二部門/多年にわたる功労
藤本 晴子
1980年、藤本さんは、窃盗を繰り返す高校3年の少年を家裁の審判後自宅に受け入れた。少年は実母と軋轢があり一緒に暮らしていては再び事件を起こす可能性があった。3年間藤本宅で暮らす中で、少年はボイラー1級の資格と大型自動車免許を取得して地元に帰り、後に公務員となった。その後も、養護施設で指導困難な中3の少女、覚醒剤を致死量近く打たれた16才の女子など保護観察所、児童相談所などからの依頼で多くの少年少女を預かり更生させた。初めは更生保護から入った活動であったが、問題の背景は子供達が育った環境(生育歴)に深く関係があることから、心の安全基地としての家庭の役割を果たすことが必要であるとの結論に達し、「先ずは、彼等と家族になること」を心がけている。
1986年中3の女子の里親に任命され、1989年家庭裁判所試験観察委託先、90年保護司を拝命、95年高知市学校不適応児童生徒相談支援事業巡回相談員を委嘱された。現在まで寝食を共にした更生支援対象者は(1)中央児童相談所からの措置里子(一時保護も含む)33名(2)家庭裁判所からの措置保護委託→試験観察5名(3)保護観察所からの措置4名(4)高知市教育研究所からの依頼不登校ケース2名(5)地域からの預かり5名の計49名に上る。
現在、藤本家の家族構成は、里子4名(高3女子,高2男子,中1男子,小6女子)、25才女性、24才男性、20才女性、元里子の5才の女児、ご主人と実子の中2女子と晴子さんの11人の大家族である。養護施設から養育里親として受け入れた子どもを父親と母親のいる家庭生活に馴染ませ、更生を支援する。子ども達には、生きていく基本のマナー、人への思いやり、愛するということ、愛されるべき自分の発掘を生活の中で学ばせ、他の人には無い、自分の中の宝物を見つけられるまで付き合っていきたいと活動を続けている。藤本ホームを巣立った子ども達が大人となった今も、現在いる子ども達に力を添えてくれることに喜びと確かな手ごたえを感じている。
受賞の言葉
この度はありがとうございました。
私たち大人は、子供たちに常に何をしてあげられるか、どうしたらよいかと考えるものです。しかし、本当は、どんな環境にも生きぬく力を、子供たちに教えていける大人が必要だと思うのです。縁あって出逢えた青少年、幼児たちに、自分たちはどう生きるのか、何の為に生きるのか、生きる事の意味、周囲に自分という存在を表現できるように、自分の中の宝ものを見つける手伝いをしていきたいと思っています。そして子供たちの心にゆとりが出てきたら、自分以外の人に何かしてあげたいと思える人間になれるよう、共に泣き、笑い一緒にもつれ合って歩いていきたいと思うのです。