第二部門/多年にわたる功労
青方 美惠子
30年程前に周辺で子供に問題を抱え困っている母親にカウンセラーの目で悩みを聞き、子どもを預かるなどの手助けをしていたことが活動のきっかけとなった。当時はまだ養護学校卒業後の障害児の行政による受け皿や発達障害児のための訓練施設などはなかった。青方さんは無償で相談に応じ、経費は自分が負担して自宅や教会・支援者宅等で相談を受け、障害者の療育訓練と自立支援、家族支援活動等を行った。一方、行政に働きかけて徐々に行政から場所や機材などの助成を受けられるようになった。その活動の一部は現在『重症心身障害児施設・小さき花の園』のデイケアサービスに引き継がれている。
2004年10月には、NPO法人「くじらぐも」を設立。くじらぐもでは、障害児と健常児の混合療育訓練、不登校児などへのカウンセリングやその家族のサポート、講演会、親塾などの事業を行っている。事業の一つとして、問題を持つ当事者(子どもとその親や学校)同士が直接話し合うことでは円満な解決が難しい場合に、中立の立場で話を聞き、考えや感情の行き違いや隔たりを無くし、双方が最も良い方法で解決できるよう支援する「リエゾン」と名付けた活動に力を入れている。リエゾンの相談1件の問題解決に1年以上かかることも珍しくない。
また、軽度発達障害児は、障害がありながら見た目が健常者と変わらないため、親が相談所に行っても理解されないことも多い。どうしたらよいかわからず悩み、子どもの障害を受け入れられるまで何年もかかる。不安で深夜に電話をかけてくることも多い。青方さんは、そんな電話こそ大事に応対しているという。そして障害者として生きる一番良い道を親と一緒に探し、親自身のケアも行っている。平成17年度にリエゾンを含め対応した児童は延べ3,000人以上、相談は電話、メールを合わせると700件以上に上る。青方さんは「大変だと思うことはあるが嫌だと思ったことはない。待っている人がいると思うと有難い気持が出てがんばれる。」と地道に活動を続けている。
受賞の言葉
この度の選考で、未だ社会に馴染みの薄い「リエゾン活動」に注目頂きました事は何にも増して嬉しく感謝申し上げております。様々な価値感の交錯する今、世代や立場の異なる親子と学校の話し合いの難しさは想像を超えたものがあります。一人でも多くの子供と大人の心をつなぎたいと願いつつも関わる問題の深刻さ故に開示し辛く、この支援のある事すらほとんど知られていませんでした。そんな中での三十余年。どれ程大きな励ましを頂戴した事か知れません。本当に有難う存じます。一層の努力を致す所存でございます。