第三分野/特定分野の功績
萩原 麗子
萩原さんは、京都に生まれ京都に育った生粋の京女で、京都府立大学大学院にて宗田好文助教授の指導の下、住環境を専攻している。研究する住居、と言う視点と、古いものが好き、そして人とふれあうことが好きという視点をもった彼女は、平成11年より、京都市西陣地区の空き家を活用する団体「町家倶楽部ネットワーク」の活動に参加し、使われることなく残っていた町家と町家で夢を叶えたいという若者との仲人役を担ってきた。
西陣は、西陣織の産地ということから、非常に多くの職人長屋、織り屋建といわれる地域独特の町家が存在している。近年では西陣織の産業構造の変化(工場集中型への)から、賃機といわれる職人は少なくなり、彼らの住居であった長屋や町家にも空き家が目立つようになった。京都府の調査発表によれば、西陣地区で800軒もの空き家がある。このような町家が活用されないのは、古い家ゆえの雨漏り、騒音などの問題であったり、家主が相続の際のトラブルをおそれること、借り手がきれいで使いやすいマンションを好み、面倒くさい近所づきあいを嫌うことなどが理由だった。
町家倶楽部ネットワークはこのような町家を活用し、それが町の力になっていくために、「町家の仲人」役をしている。不動産の仲介ではないので、手数料は取らない。萩原さんもこの仲人役のひとりである。メディアなどを通じて、古い家に住まうたのしさをアピールし、自ら金槌をふるって家の修繕をしたりすることに楽しみを見いだせる借り手さんを探し、家主には、じっくりと説明をし理解を深めていく。ゆっくり話を聞きながら、お互いのニーズをすりあわせていくことで、それまで町家を活用する気のなかった家主も活用に積極的になっていく。また、「お見合い」であるため、家主と借り手との間で新しいコミュニケーションが生まれるのが特徴で、若い入居者が地域の運動会で大活躍をするといったことも珍しくない。
平成12年からは萩原さんの発案で、町家での短期滞在体験ができる施設「エコハウス」が運用されている。より沢山の人に町家に触れてもらうことと、家主さんに新しい活用の方法を提案する二つの意味を持つ事業である。
どちらの事業も儲けにはならないが、萩原さんは、町家を通して人と人がつながることを楽しみ、地域を元気にする活動を行っている。
【脚注】
町家倶楽部ネットワークホームページ
http://www.machiya.or.jp/