第二部門/多年にわたる功労
布村 健一
都内の総合病院で外科医長を勤める布村さんは、平成7年よりフィリピンでのNGO医療チームに度々参加し、僻地医療のミッションツアーやマニラの診療所での無料診療など、フィリピンの各地で活動を行ってきている。僻地医療では、シスターと外科医、内科医、産婦人科医などの医師、ナースが総勢20名ほどのチームを組む。診療は月曜から金曜の5日間、チームの医師と現地医師とが共に朝9時から夜9時過ぎまで貧しい大勢の人々を無料で診察する。僻地のため手術室にはエアコンもない。患者にとっては自分の病気を手術してもらう一生に一度の機会となることもあるため、中には2昼夜をかけて徒歩で手術を受けに来る者もいる。そのため、外科医の布村さんの場合は、時には朝まで手術をこなす。多いときで1週間に144例の手術を行ったが、そんな時は手術台5台をフル回転させる。
ミッションに参加したきっかけは、昔世話になったフィリピン出身のシスターの要請だった。そのシスターは戦後の日本復興のために来日したが、亡くなる間際に、自分は母国のために尽くすことができなかった、フィリピンのために医療ミッションであなたの力を貸してもらえないか、と布村さんに言い遺された。布村さんは、自分の職業や英語が話せること、現在の体力などを考えると、自分がすぐに役に立てるチャンスだと考えた。
医療器具も不足気味ということで、ミッションに参加するたびに数々の器具を届け、現地で非常に喜ばれているが、フィリピンの国内情勢不安により寄港寸前に断念したこともある。また僻地ではゲリラが出没しており、キリスト教の医療ミッションであっても、襲われることもある。
勤務先での外科医長という立場もあり、NGOに出るときは他の医師に代わってもらい、その為に前もって何日も夜勤をこなし、帰って来てからもその穴埋め勤務をしたりと、時間のやりくりは非常に厳しい。しかし、勤務先からは理解が得られており、今後もNGO外科チームへの参加を考えている。