受賞者紹介

第57回 社会貢献者表彰
えぬぴーおーほうじん しおさいじょぶとれーにんぐせんたー

NPO法人 潮騒ジョブトレーニングセンター

(茨城県)
NPO法人 潮騒ジョブトレーニングセンター 理事長 栗原 豊
理事長 栗原 豊

15年前、60歳だった栗原豊さんは依存症からの脱却を誓い、回復施設を退出後すぐに仲間と共に団体を設立。依存症の回復を支援する側になった。回復には、100人いれば100通りの方法があると、それぞれの症状や境遇に寄り添っていくうちに、共同生活用の寮、女性専用の施設をはじめ、これまでになかった、依存症を抱える老人の介護施設も設立した。
他の回復施設がほとんど取組めなかった職業訓練や就労支援も始めたが、利用者は給料をギャンブルやお酒に使う事から、金銭管理を事務局で行い、立ち直り支援をするようになった。また就労支援で行う米作りでは、300名の利用者の1年分の食事を賄えるほどの収穫で、近隣農家の中でも規模は一番大きい。作物を育て収穫する喜びと、太陽の光を浴びて健康な心と体を取り戻す農業プロジェクトは依存症からの回復に確実な成果をもたらしている。刑務所でまもなく刑期を終える人も、この施設での更生を夢みて全国から集まる。また受刑者の高齢化により介護施設となりつつある刑務所の受け皿にもなっている。4階建ての会館には、心療内科、精神科を備え協力体制を整えている。

潮騒ジョブトレーニングセンターは、茨城県の南東部、由緒ある鹿島神宮の鳥居前町鹿島市で活動しています。薬物やアルコールなどのさまざまな依存症者の回復を目指して、居場所の提供と職業訓練に取り組む民間の依存症リハビリテーション施設です。

施設を立ち上げた経緯には、私自身の生い立ちが深く関わっています。昭和18年に私の父は戦死いたしました。そのため家族は離散し、私は両親の愛情を知ることなく育ちました。

少年時代から酒を飲み暴れ、周囲に反発し、不良への道を突き進んで行きました。そして、吸い込まれるように義理人情の世界に入り込んでいくことになります。肉親の愛情を知らずにいた私にとっては、そこでの疑似家族的なつながりが、とても居心地の良いものに感じられたのです。

しかし、そこで覚せい剤に手を出したことで、歯車が狂いだします。20年もの間、娑婆と刑務所を行ったり来たりを繰り返しました。ターニングポイントは、60歳の時でした。出所して直ぐに逮捕されて、また刑務所かと項垂れる私に、担当検事が裁量権を最大限に駆使して、とても寛大な処置をしてくださったのです。その条件は「ダルクに行きなさい」というものでした。処罰というよりも、そこに許しの心を感じ、私は初めて社会からの情を感じたのです。

その後、私は自分でダルクを立ち上げ、平成21年に潮騒ジョブトレーニングセンターと改称しNPO法人格を取得して活動を発展させてきました。

今までの活動を通して「人生はどこからでもやり直せる、生き方しだいで人はマイナスをプラスに180度変えていける」ということを実感することができました。そして、今日の私を突き動かしているのは、あの時受けた許しの心を引き継ぎ、次の人につなげていくことが使命だという強い思いです。

だからこそ、表彰式での安倍昭恵会長が話された「表彰式のみなさんの活躍は安倍晋三元総理の掲げた『美しい国、日本』を支えている」というお言葉は大変深く胸にしみました。今回の表彰を受け、依存症で苦しんでいる仲間に、回復することで得られる喜びを知ってほしいという願いが、一層高まっています。

わかってほしいのです。薬物に振り回され、嘘を重ね、苦しみながら生きる必要のないことを。

分かち合いたいのです。お酒ではなく、お茶の入ったグラスを握りしめて乾杯する幸せを。
この思いを伝え続けてまいります。

理事長 栗原 豊

  • 本部外観
    本部外観
  • スポーツプログラム風景
    スポーツプログラム風景
  • ミーティング風景
    ミーティング風景
  • エイサー発表会
    エイサー発表会
  • 共同墓地
    共同墓地
  • 高齢者デイサービスでの交流
    高齢者デイサービスでの交流
  • 散歩プログラム風景
    散歩プログラム風景
  • 入学式
    入学式
  • 連携先クリニックの内観
    連携先クリニックの内観
「ひとしずく」社会課題に立ち向かう方々を応援するサイト