受賞者紹介

第56回 社会貢献者表彰

NPO法人 ユース・ガーディアン

(東京都)
NPO法人 ユース・ガーディアン 代表理事 阿部 泰尚
代表理事 阿部 泰尚

子どものいじめ相談を探偵業で培った専門的な手法を用いて解決するNPO法人。T.I.U総合探偵社に2004年頃からいじめ相談の依頼が舞い込むようになった。ある学校の優等生が別の生徒に万引きの強要をしており、その証拠が必要だという相談を受け、調査を引き受けたのが活動へのきっかけ。大人の世界ならば間違いなく犯罪となるような凶悪な行為が子どもたちの世界に起きていることを実感し、ICレコーダーや専門的な手法を利用して、証拠収集する革新的な方法で問題解決に取り組む。いじめの相談は無償行おうと2015年にNPO法人化した。 加害者側に証拠を突き付けるのが目的ではなく、加害者側の子どもとも話し合いや説明を重ね、被害者側とも対処方法について話し合い、これまで250件を超える案件を引き受け解決してきた。現在、いじめ相談に対応する団体は「傾聴」に重点を置いていることが多く、解決や予防が難しい上、バラバラに活動しているので、今後各団体の“得意“を集めて知識や事例学習を行い、根本的な改善や予防効果が出やすい方法などを集約し文科省への提案を検討中。また職業として成り立つ”いじめ問題のプロ“を育てることも活動の目的としている。

私は通称「いじめ探偵」と呼ばれています。その理由は、私の本業が探偵であり、その調査技術を用い、隠ぺいされたいじめの証拠の収集やこれまで証拠収集が困難であったいじめの実態をハッキリと証明していくからです。

そうした中で、私の手元には大きく2種類の手紙が届きます。

ひとつは、感謝の手紙です。「いじめから救ってくれてありがとう。」「(ずいぶん前に介入した被害者の児童から)大学の法学部に入学できました。私も困っている人の力になりたいです。」という将来に向けての話が書かれている手紙です。時折、写真が添えられていて、成長して行く姿を見ることができると、とてもうれしく思うし、励みにもなります。

もうひとつは、いわゆる脅迫状です。はじめの頃は警察に相談することもありましたが、今では慣れてしまっています。

隠ぺいなどはそれをする理由もあるでしょうから、暴いたものを恨むのでしょう。私は立場上、最も近くでいじめの実態を見る第三者です。被害者のことはもちろんですが、加害者の背景を調べ、話し合いもすることがありますから、彼らの背景に強い影がある事も見ています。そして、強く思うことは、「誰も加害者にも被害者にもしたくはない。」ということです。

「いじめゼロ」なんて不自然だと言われることは、重々承知ですが、きっと、いじめが起きても浅い被害の内に芽を摘むことはできると思います。また、数多くのいじめの事例をより深く研究すれば、その細かな構造分析で、いじめの兆候をいち早くキャッチできる仕組みができるのではないかと思って、現在、私が見ている事例を研究しています。

いじめの予防教育をより効果的に、かつ実践的に進めて行くためには、法教育や道徳、心理やディスカッション、コミュニケーションなど様々な観点から教育プログラムを展開する必要もあると思いますから、少しずつですが、予防プログラム制作に着手しています。もちろん、いじめは日本全国で、毎日何百件と起きていますから、その対処はこれからも続けていきますが、予防教育によるいじめの重大化を防ぐ活動を、これからは強く進めて行きたいと考えています。

この度は、公益財団法人社会貢献支援財団さんには、私共のようなものを表彰していただき、感謝しています。ありがとうございました。

代表理事 阿部 泰尚

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