NPO法人 女性・人権支援センター ステップ
2001年DV被害者女性を保護するシェルターを開設。活動する中で、加害者が変わらなければ新たな被害者が出てしまう、保護するだけでは根本的な問題解決にならないと感じて、2011年にDV加害者更生プログラムを始めた。加害者を更生するためのプログラムとして、アメリカの精神科医グラッサー博士の選択理論を用いた。更生プログラムは1年間で52回受講する。52回受講することで、約8割はDV思考・怒りから解放され、家族関係を修復している。被害者でもあるパートナーが変化を認めている。
また、傷ついた被害者の心をどのように回復していくかを学ぶ被害者プログラムや、壊れた家庭の修復のために夫婦塾や個人やカップル、親子塾など、個別カウンセリングも行っている。年間100名を対象にプログラムを実施。現時点で約720名とその家族が更生を実感している。過去と相手は変わらない、自分の思考と行為と未来は変えられる、「加害者は変われる」ことを目指す輪を広げ、DV等の被害者と加害者、その家族が暴力のない平等で尊重される人生を送るための活動を続けている。
今回の受賞はステップにとってとても意義深い、嬉しいものとなりました。その理由はDV、虐待、ストーカー加害者更生プログラムを始めて丁度10年、シェルター開設から20年目を迎える大きな節目の年に当たるからです。そのような年にステップが行ってきた被害者支援、加害者の変化への支援が社会に貢献してきたことを認められたことが嬉しくてたまりません。帝国ホテルでの宿泊を兼ねてのご招待でしたが、授賞式の前日は嬉しさと、安倍首相夫人にお会いできる興奮から一睡も眠れませんでした。
眠れない真夜中に思い浮かべたことは、家族崩壊の人生のどん底から立ち上がり、新しく人生をやり直した加害者の方々の血のにじむような努力でした。
このような変化を遂げた方々の中で特に印象に残った方を紹介したいと思います。
彼は50代の男性。小学生の女の子が二人の父親。妻は40代。
結婚15年目。ある日、彼が仕事から帰ると妻子はいなくなり、もぬけの空状態。あわてて警察に捜索願いを出すが、妻はすでに警察に相談しており、捜索願い不受理届けを提出。その時の警察の対応は悪党扱いで彼は怒りがこみ上げる。それから彼は弁護士、探偵と回るが、DV加害者は虫けらのように扱われ、彼は妻のせいで彼等からこのような対応を受けるのだと考え、妻に殺意をいだき、同時に自殺願望を持つようになる。最後に向かったのが反社会組織。そこで妻の殺人をお願いしようとしたが、その前にステップの門をくぐることを決断。私が面談を行いましたが、彼は二時間泣きながら子供時代から抱えてきた心の闇について吐き出すように語り続けました。彼の両親は毎日、包丁を持ちだし、血みどろの喧嘩を繰り返していました。母親は不倫を行い、そのストレスは彼に向かいました。彼は人を信じず、暴力で世の中を渡る習慣が身に付いていきました。私はあまりにも悲しい彼の子供時代を思い、泣きながら傾聴を行いました。話終わると彼の顔に笑微笑みが浮かび、僕の人生で条件ぬきでこんなに共感して話を聞いていただいたのは初めてです。僕の中から妻への殺意と僕の自殺願望が無くなり、今日は僕の命日になりましたと語りました。感動に包まれたことを、6年前の出来事ですが、昨日のように思い出しました。彼は変化して、DV加害者の電話相談を行うようになりました。ステップは僕を育て直してくれた子宮のような存在だと語っています。この賞状は参加者と私たちスタッフの共同で獲得したものだと思います。
理事長 栗原 加代美