社会貢献の功績
望海地区在宅サービスゾーン協議会
兵庫県明石市の中心に位置する望海地区で、平成7年に保健医療福祉の専門職と行政と住民がネットワークを組んで設立された協議会。高齢化、認知症、独居、コミュニティの崩壊、学校崩壊、予想される災害の被害等を解決しようと模索する中で、効果を発揮した「地域劇」の公演を同11年から毎年開催している。地域の課題を住民が物語にして、住民が監督、役者を務め、住民の前で演じる。きっかけは、何度説明しても理解されない介護保険制度について、在宅介護支援センターが制度を簡単な寸劇にしてみたところ「よくわかった!」と大反響を得たところから。この結果から「ぼうかい劇団」が立ち上がり、悪質商法、老後のいきがいづくり、認知症予防、まちづくりなどさまざまな問題に取り組み、課題を住民みんなで物語に変え劇にすることで、参加者に強い連帯感が生まれ、劇が終わっても引き続き課題を解決しようとする更なる活動につながるといった効果を生み出している。
この度は、当団体にこのような素晴らしい賞をいただきまして、誠に有難うございます。これまで続けてきたことが間違っていなかったのだと、授賞式が始まって、しみじみと実感いたしました。同時に、共に活動してきたメンバーや地域住民の力があってこその受賞だと再度心に刻みました。また、ほかの受賞の方々の功績に触れることができ、まだまだ私たちも頑張ろうと心新たにいたしました。
思い起こせば、地域の課題を劇にしようと思い立ったのは平成11年。介護保険制度の改正で地域の高齢者たちが大混乱のなか、いかにわかりやすく説明するかに至った苦肉の策でした。小さな文字が見えない、説明が聞こえない、何度聞いても忘れるなど、高齢者の方に新たな制度の理解を求めるには、困難を極めました。あるとき、広い公民館のマイクがない説明会。「これはだめだ…」と急遽、寸劇にしたところ「今日の説明はよ~くわかった」と大盛況。そこで気が付いたのです。情報は伝わってこそ役に立つ。情報を理解できるように伝えてこそ専門性といえるのではないかと。そして、単に専門職だけが寸劇をするのではなく、地域住民が劇団員として「ぼうかい劇団」を結成し地域劇を始めたのです。それからは、「会議をやめて劇にしよう」と地域の座談会等に参加して、住民の小さな声に耳を傾け、何が一番課題なのか、地域の旬なエピソードを物語にして語られた言葉そのものをシナリオにする、そのシナリオを地域の住民で何度も作り直す。これで地域の課題がみんなに理解できる。最後の幕は夢を語りながら完成する。そして、約2か月かけて夜や休みの日に行政、専門職、住民の隔てなく練習する間に連帯感が生まれる。劇の当日、見に来る住民は身近な話に、見慣れた人が演じるので拍手喝さい。そして、劇が終わった後は、「絵に描いた餅」にしない取り組みが自然発生的に行われ、居場所つくりや防災、見守り、多世代交流等、地域の夢がいくつも叶っていく。
私たちの取り組みは、劇を演じることだけではありません。小さな声を聞き逃さないこと、一人ひとりの問題は、地域の課題でもありうることとしてみんなで考えること。そして、地域の夢をかなえること。
今回の受賞は、私たちの新たな出発にしたいと思っています。全国で活動されている他の受賞者の活動にふれ深い感銘を受けました。このような貴重な機会を下さった社会貢献支援財団に感謝の意を捧げるとともに、私たちが生活の拠点を置く地域を、より快適な住みよい場とするために活動を継続し、共に生活する仲間である住民の皆様にご恩返しをいたしたいと思います。本当にありがとうございます。
会長 尾松 芳輝