第二部門/多年にわたる功労
高橋 操夫
市立病院での勤務を経て昭和29年に静岡市内で医院を開設、多年にわたり地域住民の医療と健康管理に寄与している。同39年静岡中央警察署の警察嘱託医となり、以来、これまでに800件を超す死体検案(検視)を行っている。また同48年からは覚醒剤取締法違反に関する事件にも携わり、400件に及ぶ鑑定書を作成している。
静岡市の市域は、北は南アルプス、南は駿河湾に面する東西35km、南北83kmに及び、茨城県いわき市に次いで全国2番目に広い。このため山間地で発生した事件等では、沢や谷、長距離の山間難路を越えて現場にたどり着くなど、検視の所要時間を含めると終日を要することもしばしばある。
平成7年3月、同市梅が島関の沢支流で行った白骨状態で発見された遺体の検視では、家族から捜索願の出されていた女性が自動2輪車を走行中に誤って沢に転落して受傷、数時間後に死亡したことが歯形のX線検査等で分かった。
また同8年8月、由比町の東名高速道路で発生したトラックの衝突事故により男性4名が死亡した事案では、インター内の高速道路交通警察検死室で、午後10時頃から翌日午前10時まで12時間を要する検視を実施した。
覚醒剤取締法違反事件関係では、暴力団関係者等、特殊な組織に属する者の関係する事件が大半を占めることから、脅迫的な言動に耐え、身の危険を感じながら強制採尿、注射痕の創傷鑑定を行うほか、急性覚醒剤中毒症状の発症、禁断症状の対処などに身を挺して対応してきた。
検視や事件関係の事案は緊急を要し、診療時間内であっても対応することが多いが、氏は警察嘱託医としての任務を全うするため、自己を犠牲にし困難な状況の事案に対処している。
特に検視業務は白骨状態や全身が腐乱した状態の死体を扱うため、悪臭、腐敗汁に汚染され筆舌に尽くし難い困難を伴うが、信念と強い使命感をもって地域社会の安寧と秩序維持に尽力している。