下町グリーフサポート響和国

2001年に起きた大阪教育大学附属池田小児童殺傷事件で、当時小学校2年生の愛娘を亡くした本郷由美子さんは、事件の翌年、グリーフケアに出会い、心のケア活動を開始。さらに上智大学グリーフケア研究所でスピリチュアルケアの専門資格、スピリチュアケア師に認定されるなど、20数年に渡りグリーフケアの研鑽を重ねてきた。2018年に「下町グリーフサポート響和国」を設立し代表を務めている。団体名の“響和国” には「心が響き合い、人々がひとつになって支え合うような社会に」という願いがこめられている。グリーフケアライブラリー『ひこばえ』を設置するとともに、身近な人を亡くした人、事件や事故の被害者家族、被災した人、障がいのある人やその家族など、不安や生きづらさを抱えている人の多様なグリーフに寄り添う活動を行っている。グリーフを抱える人の中には「笑ってはいけない」と考える人も多く、活動の中では、安心して笑える場・涙を流せる場として、専門家の賛同を得て「落語」「紙芝居」「音楽と絵本」などを通して、癒やしの時間・空間を提供する活動も実践している。また団体運営スタッフのスキルアップ講座や研修にも積極的に取り組んでいる。多くの方にグリーフケアを体感してもらえるよう、これらの活動を無償で行なっている。
この度「社会貢献者表彰」という大変名誉ある賞を全国のみならず、世界中で地道に活動されているみなさまと共に受賞させていただき、大変光栄に思います。私たちの活動をあたたかく見守り、支えてくださっている多くの方々とボランティアスタッフの皆様のおかげによる受賞です。心から感謝申し上げます。
私たちの活動は、誰もが経験すると言われる喪失による悲嘆をケアする「グリーフケア」の啓発活動と安心して安全に「かなしみ」を分かち合え、自分らしくありのままでいられる時間と空間を過ごせる居場所作りです。
活動を始めたきっかけは、自身が2001年に起きた大阪教育大学附属池田小学校児童殺傷事件に巻き込まれ、深く多様なグリーフを抱えたからです。
2000年前後は、阪神淡路大震災が起き「心のケア」が社会に広がり始め、様々な立場の当事者による自助グループが活発に動き始めた時期でした。自身も犯罪被害者遺族当事者として「グリーフケアの必要性」を感じ、事件直後から学び、実践、啓発活動を開始しました。犯罪や災害の被害者だけではなく障害、生活困窮、虐待を受けている人、加害者と呼ばれる人、様々な立場の人たちと出会い、社会に中にある「多様なかなしみ」に触れ、『社会の中にある「様々なかなしみ」の声に耳を傾け寄り添いあえる社会は、今を生きる私たちにとって安全・安心・平安な社会につながる』との考えに至り、「恩送り」活動としてグリーフケアの活動を継続しています。
2016年、「東東京にグリーフケアの場を作ってほしい」という相談を受け東京都に「かなしみ(悲しみ・哀しみ・愛しみ)にこころを響かせあい、寄り添い合い、繋がりあえる、和やかな社会になることを願い「下町グリーフサポート響和国」を設立しました。千差万別と言われる多様なグリーフに寄り添えるよう20数年の経験知を活かし、セルフグリーフケアの空間「グリーフケアライブラリー」の運営、「かなしみ」をゆるめる、解く、和らげられるようなグリーフケアのイベントを芸術や文化等に関わる専門家、行政の協力を得て開催、必要な方にお届けしています。
ささやかな空間と時間ですが、全国から多数の方がお越しくださっています。このような居場所が確かに求められていることを感じています。
人の和(繋がり)・環(お互い様の心)・話(気持ちを分つ)を大切に
受賞を励みとし、「グリーフケア」が当たり前に営まれる優しい社会の実現を目指し、一人でも多くの方にグリーフケアが行き届くように無償での「恩送り活動」を継続して行きたいと存じます。