社会福祉法人 旭川いのちの電話
1980年旭川市に全国で11番目に開設した旭川いのちの電話。自殺予防などほぼ24時間体制で電話を受け、対話を通じて寄り添い、傾聴する活動を42年間継続している。電話を受ける相談員の業務は、中核市である旭川市の精神保健業務の一環とみなされ、旭川市が所管する庁舎を事務所として無償で提供されており、全国でも稀な協力体制で運営されている。相談員になるためには日本いのちの電話連盟の相談員養成講座を、規定を超える1年4か月以上受講し、さらに実地訓練を経て認定される。電話の相談事業はボランティアである相談員102名が行っていることで、現場の声を反映しやすい環境となっている。相談員のサポートを行うことも重要で、研修などを通じてストレスケアにも十分な配慮がされている。コロナ禍で相談員の活動も自粛せざるを得ない状況が続いたが、独居高齢者の相談が増加し、雇い止めや勤務時間の縮小などで40.50代のかけ手からの相談も増え、自死の数は増加傾向となっている。そのような状況下で、かけ手である相談者の言葉の背景にある本音を見つめながら、よき隣人として寄り添う努力を続けている。
この度、公益財団法人社会貢献支援財団から社会貢献者表彰を賜り、深く感謝申し上げます。1980年12月1日から続いている市民活動としての旭川いのちの電話が、ボランティアによる相談員の43年にわたる地道な電話相談活動を継続できたのも、北海道、旭川市、上川町村会や各団体・個人の後援会のご支援や新聞広告に協賛していただいた企業や医療機関、寺社や法律事務所の皆様のおかげと感謝しております。
また、日本いのちの電話連盟では北海道ブロック会議で常にご支援して下さる北海道いのちの電話の理事長や事務局長、研修委員長にもお世話になり、今回はご推薦も頂きました。
旭川は1970年代に日本で一番自殺が多かったところです。自殺予防を願った開局記念講演では日本「いのちの電話」の生みの親であるルツ・ヘットカンプ先生が語った
「神に愛されないで、この世にいる人は一人もいない」という言葉が残されています。
開局20周年となる2000年の記念公開講座では「最近の子どもの精神病理」について、社会化の達成としての父親の役割の重要性を語っていただき、毎年12~13の継続研修グループが専門職や相談員リーダーと共に傾聴や心の病気について深めてきました。
2010年には開局30年、記念公開講座で渡辺和子氏より「生かされて生きる」と題して、ささえあいの環の中で、心を寄せ合って、人を生かす態度や言葉について深めました。
コロナ禍において、2020年度の当センターの総件数は10,575件、内自殺傾向は453件(4.3%)、2021年度は総件数10,833件、内自殺傾向は468件(4.3%)について一日平均29.7件の相談を約100名の相談員が、人生、思想・人権、職業、経済、家族、夫婦、教育、対人、男女、身体、精神等に関する内容の相談電話を受けている状況です。
今年度、第44期となる電話相談員養成講座には約20名近い受講者が応募され、地域社会への貢献や自殺予防いのちの電話の活動の価値が再度見直されてきているように思います。第1期の受講者が現役で相談員を継続されていることも皆の励みになっています。
電話を通して、言葉にならないことば、沈黙や誰にも言えない思いを語り、聞かせて頂く場として今後も北海道内外の多くの皆様のご支援やご協力をいただきながら、つながりを広げて活動を進めて参りたいと考えております。
理事長 相澤 裕二