千房株式会社
“過去は変えられないが、自分と未来は変えられる” 更生を誓い、働く意欲のある受刑者に、人事担当者らが赴き、刑務所内で面接を行い採用の内定を出す、世界的に初めての取り組みを行っている、全国にお好み焼き店を展開する企業。創業以来、出所者を雇い入れていた実績から、法務省が更なる就労支援を同社に依頼し、2013年に日本財団からの呼びかけで、「職親プロジェクト」を発足、中心的存在となり、全国で元受刑者の更生の為に雇用を促進するリーディングカンパニーとなった。反省は一人でできても更生は一人ではできない、出所後の環境を整えることが、再犯防止に大きく貢献すると、身元引受人となり住居から、衣類、家具までも揃え、生活と職場両方を整備し、社会復帰の後押しをする。最初の仕事が合わなかった場合でも、飲食・建築・理美容等が参画する企業間の連携で、次の仕事を紹介し、一度で挫けることの無いよう、サポートを続ける。大阪を代表する企業が取り組んだことで、病院も含めて職親プロジェクトへ参画する企業も増え、民・官・公益、3つのセクターの理想的な協力体制の成功例と言える。
精一杯のお礼の言葉を述べようと考えていた受賞者代表の挨拶でした。悲壮な安倍晋三元総理の銃撃事件の直後だけにご夫人である会長の安倍昭恵様はご臨席なさらないだろうと思っていました。表彰式直前に「ご臨席くださる」と知らされ、受賞者に喜びの声が。ところが、ハッとしたのです。私の受賞は元受刑者の就労支援についてです。表彰状には「刑務所内で受刑者の採用募集を行うなど就労支援をすることで社会に一石を投じ2013年には「職親プロジェクト」を設立し企業間の連携で就労者をサポートし協力雇用主の拡充にも取り組み受刑者の更生を支援する活動を続けています よってここに功績をたたえこれを表します 会長安倍昭恵」お一人おひとりに手渡ししていただき感激しました。そして、私は受賞者の代表挨拶を依頼されていました。安倍会長の前ではとても話す勇気がでませんでした。言葉が詰まり詰まりでなんとか御礼の言葉を話し終えた時は万感の想いでした。
国は「再犯防止」の取り組みと言われますが私は正直その様な意識はありません。私たち「職親プロジェクト」は更生意欲、就労意欲のない者は採用しないからです。千房を創業して50年を迎えます。創業当時、人出不足で大変苦労してきました。藁をもつかむ想いで求人活動をしていました。学歴不問・過去は一切問わない。採用している中に元受刑者がいたのです。彼らは立派に成長し、やがて幹部になり独立していく者もいたのです。そんな成功事例を持つ千房に法務省から受刑者の就労支援の強力な依頼があり、私は「やってみたい」と思ったのです。役員会議に諮りましたが賛否両論。過去は変えられないが、自分と未来は変えられる。「経済」とは経世済民を略して経済。つまり、世を経め(おさめ)民を救うことです。私が責任を取るという事で実施に踏み切りました。以前から協力雇用主制度の存在は興味があり知っていましたが、どんな会社がどんな人を採用しているかは全く知りませんでした。法務省矯正局の絶大なご協力によって前代未聞、刑務所内で採用募集をし、刑務所や少年院内で応募者の面接、良ければ内定を出します。また、この取り組みをオープンにしようと思いました。過ちを犯した人が罪を償い、立ち直る場所は社会だからです。社会が思い込みや偏見をもって接することは、彼らを孤立させ、立ち直りを阻むことに繋がります。「仕事と住居」これは更生への最低条件です。職の親として居場所を無くした人を皆で支える「職親プロジェクト」が日本財団のご支援によって2013年に発足したのです。反省は一人でできますが、更生は一人ではできません。大阪から始まったこの取り組みをオープンにしたことによって北海道から九州まで今では全国に200社の企業が加盟しており、採用も200名を越えています。一線を越えた元受刑者の更生は正直、一筋縄ではいきません。現実の前では理想はほとんど無力です。それでも、千房も既に43名を受け入れ、店舗責任者として活躍している者もでてきました。
過去は変えられませんが、自分と未来は変えられます。そして未来が変われば過去(価値)にも変わるのです。何よりも納税者になるのです。
「いらっしゃいませ」今日も元気な声が聞こえてきます。経営者としてこんなやりがいを感じる取り組みはないと思っています。
感謝!
代表取締役会長 中井 政嗣
日本財団職親プロジェクト代表