子育てオアシス
福岡県全体のうち、不登校の割合が2倍高い筑豊地域で、子育て相談、支援活動を行おうと、教育長を務めた藤江文雄さんが2001年に仲間と共に始めた任意団体。児童相談員から、ひきこもり児童への具体的な支援の手立てがわからないと相談を受け、中学生の学校への復帰・社会的自立を支援する場が必要と、市内の統合により使われなくなった幼稚園を借りて運営している。月曜から金曜まで小中学生への学習指導の他、保護者対象の子育て相談や、教職員の自主研修支援も行う。生徒を教える完全無償のボランティアは、主婦を中心に教員免許を持つ人やピアノ教師、書道家、英語が得意な人などで構成されている。行政機関の支援により施設の電気代や水道代は市が負担。学校との連携もあり、宿題やテストの共有、復帰のタイミングや受入れ体制への相談が可能で、教育委員会の理解もあり、オアシスへ通っている子どもたちは出席扱いとされる。先入観を持たないために、ボランティアらは、一切子どもについて、なぜ不登校やひきこもりになったかなどの情報を共有しない。規則はあえて設けず、掃除と挨拶ができれば社会に出ていけると、公立高校に合格できる学力を身につけさせている。
この度の受賞に対して深甚の感謝の念を抱き、その心を私たちの誇りとして、宝物として、これからの歩みをより確かなものにしなければと、その意を新たにいたしました。
省みれば、これまでの23年間の歩みは、子どもたちとその保護者の頑張り、各種企業や団体のご理解とご支援、真摯に関わってくださった行政や教育現場、そして理解ある教師達、周囲から見守ってくださった市民の皆さん方のお陰だと深く感謝しています。
個人の邸宅の半棟をお借りして、当時主婦で子育て真っ最中の方4名を中心に10人ほどの協力者が集い開設の準備を進めていました。そのような時、ある家庭児童相談員の方から、「各家庭を訪問しても、登校拒否生徒の世話ができない、どのようにしたらいいのか解決の手だてが見つからない」と問いかけられました。オアシスではスタッフと話し合い、閉じこもりの生徒を預かることになりました。2001年9月4日「子育てオアシス」が4名の中学生を迎え五里霧中のなか、歩みを始めました。そして23年、その間さしたるトラブル、生徒の反社会的行動等もなく、旅立った生徒達はそれぞれの道を歩み続けています。今回の栄えある受賞を機に23年間のまとめを作成しながら、コロナ禍、大きな社会変動の中に彷徨う子どもたちの、社会的自立性の陶冶を第一にして活動を進めてまいります。
その手立てとして、IT関係の教育機器の整備、体験活動の充実、などに活用しながらオアシス態勢の再構築…オアシス発足当時のサポーターはすべて女性で、子育て途中の専業主婦で、各々が持つ特性を生かして生徒たちと接してくれました。各々が持つパワー全開で、オアシスはサポーター自身に生き甲斐を感じさせる程に充実していきました。
しかし、サポーターたちは社会の多様な分野から必要な人材として嘱望されるようになり孫の世話等と相俟って、オアシスから旅立って行く人が増えてきました。その補いとして市の学習支援人材派遣事業の世話をいただいたり、人脈を通して新たに参加していただくサポーターで、オアシスは新たなステージへ進んでいこうとしています。
また、オアシスは発足当時の理念を礎に、生徒に寄り添い、育み慈しみ、生徒に覆いかぶさったストレスが消滅され、生来の個性を有した人間に回復する日を期待できる活動を進化させたいと願っています。そのために、下記のA、B、・の意識の大切さを広めます。
A「認める」…自尊心の回復。すべでの子どもは人間らしく幸せに生きていく権利を持って生まれてきている。と確信しています。
オアシスに在籍している生徒は誰も反社会的行動を経験したことはありません。
B「褒める」…向上心の涵養。些細なことでも叱らない、否定的な指導はしない。
出来たことにはその場で賞賛します。
・「待つ」…自立心、自律心の涵養。生徒たちはストレスがかからない環境では、
自分でストレスを消滅させ、自分らしさを確立していきます。それには私たちが待つ
根気良さを持つことが必要です。
代表 藤江 文雄