受賞者紹介

第54回 社会貢献者表彰
いまいずみきねんびるましょうがくかい

今泉記念ビルマ奨学会

(埼玉県)
今泉記念ビルマ奨学会 会長 今泉 清司
会長 今泉 清司

埼玉県鶴ヶ島市在住の今泉清司さんは先の大戦でインパール作戦に従軍し、ビルマの人々から受けた恩を返したいという気持ちと、戦友に対する慰霊も込めて、1989年から私財を投じて奨学会を設立し、日本へ留学するミャンマーの学生に奨学金を贈る活動を始めた。学生一人につき返済不要の月4万円を2年間、19年間で178人に支給した。奨学生は母国や日本国内、世界各地で活躍する人材となった。
2010年からは、奨学会の卒業生が会を運営し、ミャンマー国内の寺子屋や大学生に奨学金を贈っている。また、ミャンマーに2つの図書館を建設し、書籍を贈呈したほか、鶴ヶ島市国際交流協会と連携して、市民から集めた文具を現地に送る活動も行っている。鶴ヶ島市は2020年東京オリンピック・パラリンピックホストタウンにいち早く登録されているが、奨学会が日本とミャンマーの架け橋となり、両国の友好親善が盛んに行われていることの証といえる。

推薦者:埼玉県県民生活部国際課

 今泉記念ビルマ奨学会は、1989年に第二次世界大戦中にビルマ(現ミャンマー)に従軍した退役軍人の人たちの協力などを得て、ミャンマー発展のための人材育成に貢献できればと、日本に留学するミャンマー人学生を支援するために始めた奨学会です。
 奨学会設立に協力してくれた退役軍人の人たちは皆、「あの過酷な戦場から生きて帰れたのは、自分たちの食べる物にも不自由する中で、我々に食べ物を分け与え、英軍の目を盗んで怪我人を介護してくれたミャンマーの人たちのお蔭で、この奨学会もその温情に対する万分の一かの恩返しだ」という思いでした。

当初は奨学会を財団として設立したいと考え、「戦後開拓」で苦労して得た私の所有地の半分以上に当たる3千坪の土地と基金を銀行から借り入れて財団を作る構想でしたが、どうしても許可が下りませんでした。

そこで、最終的に自分の私費から年間1千万円程度を拠出する計画で奨学会を設立しました。奨学生は関東圏の大学に在籍するミャンマー人留学生を対象として、多くの応募者の中から毎年約20名を選抜して2か年間、毎月4万円の返還不要の奨学金を支給してきました。

ただし、毎月の奨学金支給日には必ず本人が今泉宅へ受領に来るようにし、その都度、私が人生訓や情報交換を行いました。結果的に卒業生からは奨学金以上に為になったと感謝されています。奨学生同士の交流も盛んになり、うれしいことに結婚したカップルも複数生まれました。

日本に留学するミャンマー人学生の支援は2009年までの20年間続き、卒業生の数は178人になりました。奨学金を受給した学生たちは親日の留学経験者として、母国をはじめ、日本国内や世界各地で活躍しています。

2010年からは私の気持ちを受け継いだ卒業生が中心となって、現地の学生の支援や図書館建設など、ミャンマーにおける支援にシフトする形で奨学会の運営を継続しています。私の住む鶴ヶ島市でも、奨学会と協力して市民から集めた文具を現地に贈る活動を行っています。

来年、東京オリンピック・パラリンピック競技大会が開催される予定です。鶴ヶ島市は、2017年にミャンマーのホストタウンとして国に登録され、ミャンマーとの市民レベルでの交流を深めています。「平和の祭典」を象徴する交流で、より一層両国の友好を深めていくことができればこの上もない喜びです。

「かけた情は水に流して受けた恩は心に刻んで求めず欲せず心豊かに日々感謝」私の処世訓の一節です。これからも奨学会の活動を通じて、そして亡き戦友を思い、ミャンマーに対して「万分の一かの恩返し」ができればと思っています。

結びに、私たち奨学会のこれまでのささやかな活動に対して、社会貢献者表彰という大変栄誉ある賞を賜りましたことに深く感謝申し上げます。

会長 今泉 清司

会長 今泉 清司
1923年 新潟県生まれ
1941年~1945年 徴兵により中国、マレーシア、タイ、ビルマ(ミャンマー)を転戦
1945年 終戦帰国後 埼玉県鶴ヶ島に国策の「戦後開拓」で入植
1989年 今泉記念ビルマ奨学会を設立
  • 2019年 ミャンマー奨学金授与式
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  • ミャンマーオリンピック選手団と食事会
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  • ミャンマー奨学生との遠足旅行
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  • 学生たちの写真と会長
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  • 鶴ヶ島市から郵送した文房具を寺子屋へ贈呈
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  • 鶴ヶ島市ミャンマー水かけ祭りでタナカ体験
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受賞者とみなさまをつなぐプラットフォームプロジェクト「ひとしずく」