公益財団法人 阪喉会
喉頭がん等により喉頭摘出手術を受け、声帯・言語機能を失った人に対し、代用音声による発声練習の指導や発声指導員の養成研修、喉頭摘出者専用の発声補装具や専用の日常生活用具の研究・製作、販売、並びにこうした身体障碍者の社会参加の促進を図る目的で1946年に設立された。このような会は、当初日本はもとより世界でも初の取り組みだった。また、 喉頭がんの一次予防としての禁煙運動の支援事業も展開している。言語機能喪失者の代用音声として、食道発声法、笛式人口喉頭発声法、電動式人口喉頭発声法、シャント発声法などがあるが、器具を使用せずに発声する食道発声法が主流となっている。これらの各発声法を、肥後橋教室、大阪大学付属病院発声教室、大阪国際がんセンター発声教室の3か所で、上達度合いによりクラス分けされ毎週開催されている。阪喉会は、講師も事務方も全てボランティアによって運営されている。
機関誌を作成して、年間行事の様子や会員からの投稿などを掲載している。話せないことによって引きこもりになる人も多いため、一泊旅行などを計画して外に出る機会を設け、悩みを打ち明け合う機会を作るなどしている。また、毎年5月の世界禁煙デーに合わせ、禁煙を訴えるイベントを行い、この活動には大阪市の職員や国立がんセンターの看護師や医師なども参加しており、NHKも取材に訪れるなどして、毎年とりあげられている。また、受動喫煙についての厳しい条例制定に向けて大阪府への働きかけも行っている。
公益財団法人阪喉会(以下、阪喉会)は、喉頭がんなどの切除手術で、喉頭を摘出され、声を失った者たちの患者会です。会員たちは、高齢者で、がんサバイバーで、言語障害の中途障害者という、いわば三重苦を抱えています。三重苦というと重苦しい感じを与えますが、代用音声という第2の音声言語を操って、生き生きと暮らす、楽しい仲間たちの会です。
私たちは無喉頭ですから、本来の音声言語は失って、回復できません。代用音声という技法を使って会話をします。代用音声には、器具を使わない食道発声法、シャント式発声法、器具を使う電動式人工喉頭発声法、笛式人工喉頭発声法があります。どの方法で話をする場合にも訓練が必要ですので、阪喉会の最も重要な事業は、代用音声の訓練のための教室運営になります。
阪喉会の運営を行うのも、教室で指導にあたるのも、すべて元患者である当事者です。先輩の患者が後輩の患者に代用音声での会話の仕方を指導します。その指導の内容は、先輩たちから脈々と受け継がれ、蓄積されてきた経験的な知識に基づいています。阪喉会は1949年に創立され、以来70年にわたり、活動を続けてきました。この70年にわたる先輩たちの活動の積み重ねが今日の私たちの活動を支えてくれています。
声を使って会話するというのは、人間にとってとても大切な手段です。命を守るためとはいえ、それを失えば、生活は混乱し、どうして暮らすか、失意のせいで途方に暮れるほどのことです。それが阪喉会の教室に通って、代用音声での会話ができるようになってくると、元通りの生活や友だちづきあいを取り戻し、生き生きした暮らしぶりになってきます。私たちは高齢者の団体として、高齢者にとっての社会参加の大切さを、身をもって知っています。会話ができるようになれば、いろいろな社会参加の条件が整い、生き生きした暮らしが見えてくるようになります。
阪喉会は、今回、公益財団法人社会貢献支援財団の表彰を受けました。このことは、高齢者、がんサバイバー、障害者のために活動する、多くの団体にとっても、とても励みになることだと考えています。超高齢社会となった日本では、今後、ますます慢性病で悩む高齢者や、障害を負った高齢者が増加していきます。そのような高齢者を支える患者会など、社会貢献を行う団体の重要さは大きなものがあります。阪喉会は、今後とも、その一端を担い続けることを誓います。それとともに、貴財団が高齢者のための社会貢献団体に強い支援の手を差し伸べられることを祈念いたします。
理事長 上西 洋二