NPO法人 エンカレッジ
沖縄県で塾を経営している坂晴紀さんが、子どもたちへ均等に学習機会を与えたい、全ての子どもたちに夢を持たせたい、自分たちの将来に希望を持たせたいと、就学援助児童への無償の学習塾「NPO法人エンカレッジ」を2011年に開設。「経済的に困窮している家庭の、意欲ある児童のための、学習に打ち込める環境づくり」を目的として、「頑張る意欲がある子どものためのセーフティーネット」として取り組んでいる。
現在は県下に24カ所の教室を構え、200名のスタッフと900人以上の生徒が通い、着実な広がりを見せている。
ここに通う子どもたちは、市町村の福祉窓口から紹介されたり、広告を見て応募してくる子どもたち。学習指導以外にも、進路指導、勉強することによっていかに自分の未来や可能性が広がるかを伝え、高校への進学を促すほか、高校進学後も居場所を提供していて、面接の練習や履歴書の書き方など生活指導も行っている。
通ってくる子どもたちには未来の可能性を伝えたり、話をよく聞いて導いていくと劇的な変化を見せ、伸びしろがとてもあると坂さんは感じている。安心できる居場所を提供し、褒め、知的欲求を満たし、達成感を感じることで、子どもの能力は無限に伸びていく。教育格差によって生じる負の連鎖を断ち切り、沖縄の出生率の高さをもって、社会で活躍できる子どもを育てるのは、まさに少子化の日本の現状を、将来支える仕掛けになるのではないかと期待される活動。
私は20年前から沖縄県沖縄市を中心に学習塾を経営しております。運営する中で、子どもの学習環境を整えたくとも経済的に立ちいかない保護者、そして通塾を諦めてしまう子どもを見てきました。子どもたちの可能性をより伸ばす環境を整えたいとの思いからスタートしました。
塾経営でしたが、私がサポートできるのは一握りでした。そしてよくよく調べていくと、沖縄の貧困率の高さの背景には、前の世代からの貧困の連鎖を断ち切れていない世帯が多数あるということ。経済的要因から学習や職業選択の自由が効かず、夢や希望を諦めるしかなかった例が少なくない。この状況をなんとかしたい一心で、有志とともに法人を立ち上げ、就学援助児童を対象に通塾支援から活動を開始しました。現在では沖縄県や市町村より受託し、県内21箇所で居場所型学習支援教室を運営しております。
当初は、塾など学外の学習環境で勉強をしっかりわかりたい、という子どもたちがほとんどでした。しかし活動の幅が地域・層ともに広がる中で、教育以前の問題を抱える生徒が少なくないことがわかってきました。中でもとりわけ感じたのは自己肯定感が低く、学習以前の、ゼロやマイナスの問題を抱える子どもたちの多さです。近年は特に、発達障害を抱えるケースの相談も増えてきました。
どんな子どもたちも、自分の可能性を拓くことができるようにするために。私たち大人は子どもたちが社会に対して夢や希望を持てる環境を整えていかねばなりません。そのためには、教育という一つの側面だけでなく、福祉や社会との多角的なサポートが必要ではないでしょうか。また、多様化する子どもたちの社会での受け皿と、机上の学習以外の評価基準が必要であると考えております。多様な機関と連携を図りながら、子どもたちを共に育んでいく仕組みを早急に整えていきたい。
年々その必要性をより感じる中で、今回の社会貢献者表彰を受賞いただき、背中を暖かく押された気持ちになりました。受賞後間もないですが、社会に対して、必要性をより訴えやすくなったと感じております。
また、今回の受賞は、これまで当法人の活動にお力添えくださった行政や企業、サポーターの皆様と、そして何より、夢や目標に向かって学習に励んだ子どもたちのお陰だと感じております。子どもたちが成功体験を得た時に見せる笑顔や成長が、私たちの活動の何よりの原動力となっています。そして一緒に見守ってくれるサポーターの皆様のおかげで、子どもたちが学ぶ環境を整えることができています。改めて感謝の気持ちでいっぱいです。
最後に、素晴らしい方々と一緒に受賞できたことをとても光栄に思います。子どもの貧困というワードをなくし、皆が夢や希望を失うことのない社会を目指し、これからも活動を続けてまいります。