表彰式典

第51回 社会貢献者表彰式典(於:帝国ホテル東京)

受賞者代表挨拶

受賞者代表・森口 エミリオ 秀幸 さん

受賞者代表・森口 エミリオ 秀幸 さん

ブラジルで日本人永住者の巡回診療を行っております森口でございます。

受賞者を代表いたしましてご挨拶をさせていただきます。

本日はこのような光栄な賞を社会貢献支援財団から授与いただき、受賞代表者として深く御礼申し上げます。ありがとうございます。

 

今年は日本人のブラジルへの移民が1908年に始まってから110周年の年となり、ブラジル各地で記念の行事が盛大に行われています。現在では日本人移民の一世をはじめ2世3世と世代が進み6世も誕生していますが、それら日系人の数は190万人に達し、日本の次に日本人の多い国となっています。今一世の数は全日系人人口の12%、まだ20万人近くが健在で、多くの方は移民計画初期の頃に農業移民で渡伯し、慣れない環境の中、大変な苦労をされた方々がほとんどです。そんな中、多くの方はご自分は不自由をしながらも、お子さんにはしっかりとした教育を授け、そのおかげで日系人のブラジルでの信用は非常に高く、各分野で大勢の日系人が活躍しています。

私の祖父、細江静男がブラジルに移住した日本人、日系人への巡回診療を1930年に始めて90年近くが過ぎようとしています。祖父はブラジル全土の日本人移住地を回り、1975年に亡くなるまで日本人移住者たちの健康を守るためにその一生を捧げて尽くし、ブラジルのシュヴァイツァーとも呼ばれていました。子供のころサンパウロ近辺の巡回診療に何度か同行し、昼間は一人一人に心を砕く丁寧な診察、夜はその地域の人々を集めての教育講演と、地方の無医地区の日本人移住者のために頑張る逞しい祖父の姿を目の当たりにし、それが今でも私にとっての理想の医師像としてこの道へと進ませた何よりの理由でした。祖父が亡くなった後は、父、森口幸雄、がブラジル南部(リオグランデ・ド・スール州、サンタ・カタリーナ州)の巡回診療を続ける事になり、私も10数年前から第三代目の巡回診療医として仕事を引き継がせていただいております。毎年、日本全土を越す面積を巡って、移住者の方たちの健康管理、疾患予防そして治療をという三大責任を背負い、現場で9割近くを解決しながらの毎年のボランティア行事です。今年も、計3500Km以上の距離を移動しながら、400人近くの患者さんたちを診察させていただきました。特に、最近は出稼ぎ者の留守を守る孤老の方が多く、高齢者施設や介護サービスにまで行政の手が回らない当ブラジルにおいて、これらの高齢者の方が病気になった際のケアが大きな問題となりつつあります。この巡回診療を必要としている日系移住者の方たちの健康管理・疾患予防のみならず、移住地での介護のための教育・指導を何らかの形で取り入れることを真剣に考える時期が来ていると痛感しています。これは私一人の力では限度があります。少しずつでも近い将来に向けて、この巡回診療を「診療のための巡回診療」から「移住者の方々が人生の最後のときを幸せに過ごすことができるためのお手伝いの巡回診療」へ、と発展させていけたらというのが、私の巡回診療を通じての日系移住者の方々に寄せる思いです。

当然、巡回診療を行うのは私一人ではありません。各植民地、特に僻地に在住なさっている永住者の方達を訪問するために欠かせない巡回診療バスを、草の根支援を通し提供してくださった日本国民の皆様、巡回診療実行ために必要な経費をクラウドファンディングを通しサポートしてくださっている皆様、日本から毎年ボランティアとして参加してくださっている横浜市大及び防衛医大の先生と学生の皆様、JICA、地元でお手伝いしてくださっているボランティアの皆様、そしてこれらすべてのサポートを取りまとめ、スケジュールの組み立てや各移住地への連絡から始まり、すべての手配を整えてくれる南日伯援護協会のスタッフの方々に、永住者の方達を代表して、心より感謝申し上げます。

 

私は今、40件の受賞者の方達を代表して挨拶させて頂いておりますが、皆様のお話を聞きながら、本当に色々な分野で色々な方が頑張られているのだなと思いました。この会に出席するまでは知らなかった、こんな活動をしている方がいらっしゃるのだという方が大勢いらっしゃいます。そのような皆さんのお話しをお聞きしているうちに、一つ感じた事があります。それぞれの方が様々な形で、他人を思い、心配し、そして必要としている方に力を貸してその人に幸せになってもらいたいと、心から願っていらっしゃるということです。必要としている人の笑顔が見たい、安心した顔が見たい、幸せになってもらいたいと願うこのような方達がどんどん増えていくことで、世界は良くなって行くのだと感じています。そしてこのような活動を評価し、さらに世の中に広め伝える機会を与えて下さるこの社会貢献者表彰の重要性を改めて認識いたしました。

今回、私たちのように何らかの形で社会貢献及び人命救助にかかわって活動をしている個人又は団体を認めてくださり、第51回社会貢献者表彰受賞式を開催してくださった社会貢献支援財団の方々に心から感謝申し上げます。

本日は本当にありがとうございました。

森口 エミリオ 秀幸