受賞者紹介

第51回 社会貢献者表彰

社会貢献の功績

とくていひえいりかつどうほうじん わたりぐりーんべるとぷろじぇくと

特定非営利活動法人 わたりグリーンベルトプロジェクト

(宮城県)
特定非営利活動法人 わたりグリーンベルトプロジェクト 共同代表 嘉藤 一夫
共同代表 嘉藤 一夫

宮城県の亘理町では、2011年の震災で防潮林の大部分と4つの集落が流出・崩壊した。町では震災の年から復興に向けて動き出し、町民延べ200名による都市計画の「マスタープラン」が策定された。防潮林の流出は、海からの強風や砂埃の害など、町に今も多くの影響をもたらしている。震災後からボランティアと共にわずかに残った防潮林から種を採取し、苗木づくりを行い、現在地元小学校4校が総合学習としても防潮林の再生活動を取り入れており、4年生で種植え、5年生で鉢替え、6年生で植樹するなど、2020年までに合計14.1haに亘る植樹活動に取り組んでいる。
防潮林の再生は植えて終わりではなく、枯れた木の補植や外来種駆除などの維持管理を行っていく必要があり、わたりグリーンベルトプロジェクトは長期的な活動を目指してい
る。また、震災前の防潮林は町から委託を受けて住民が維持管理をしていたが、震災後住民が減少したことで担い手が不足しており、流出せずに生き残った木々の管理も同団体で行っている。
このほか、住居移転により失われた被災高齢者のコミュニティを再生させるため、農作業や昼食の提供を送迎付きで行う活動や、地域に新たな集いの場をつくる ”熱気球フェスティバル”を開催している。 今後は植樹や農作業体験以外にも、ビジターセンターの開設などを検討している。
自力復興していくため、豊富にある遊休農地と、砂地という特徴を利用した落花生の生産と加工品づくりに向けた活動を始めるなど、多方面から町の再生を図り、力を尽くしている。

推薦者:渡邉 修次
植樹祭の集合写真 160名参加
植樹祭の集合写真 160名参加

今回、貴財団からの誠に栄誉ある「社会貢献賞」をいただき、感謝感激です。

宮城県亘理町の海岸一帯には、東日本大震災以前、幅300mにもおよぶ豊かな森がありました。クロマツを主体にコナラ、ヤマザクラなどの広葉樹もあり、オオタカなどの野鳥、地上にはキツネをはじめ、小動物なども生息していて、秋にはキノコ採取もできる自然豊かな防潮林でもありました。希少植物であるシロヨモギなども生育していたのです。

また、昭和30年頃までは、そこで松ぼっくりや枯れ枝などを拾い集め、石油時代以前の貴重な家庭の燃料資源にもなっておりました。

さらに、海岸の砂浜が日本でも有数の「鳴き砂」であることが平成になってわかりました。このように震災前の沿岸部は、とても自然豊かな地域でした。

震災後は、誰しも茫然自失でしたが、駆け付けてくれたボランティアの有志達から“何かできることはないか”との提案を受け活動を開始したのが、「わたりグリーンベルトプロジェクト」でした。「生態計画研究所」の小河原所長をはじめ専門家の方々に加わっていただき、町民参加のワークショップを行い、沿岸地域における復興後の未来図を作成することからスタートしました。防潮林再生としては、苗木づくりが最初の仕事でした。

ほとんど資金のない状態でしたので、複数の大企業のCSR(社会貢献活動)に働きかけ、各企業の方々が共同、あるいは単独でのツアーを組んで訪問支援を行うという、資金的かつ人的な奉仕をいただきました。

一方、海岸ではコンクリートによる現代版万里の長城とも言うべき巨大な堤防ができ上がりましたが、内陸部への海からの影響を防ぐには、かつての豊かだった海岸林を再生することが肝要なのです。

植樹そのものは明年度で一旦終了する予定ですが、立派な森とするための維持管理には数十年の期間と膨大な費用、人手がかかります。そのため、未来の担い手育成として、小学校での総合学習を通じた、海岸林の重要性や植樹に関する教育活動も行っております。

また、震災後にNPO法人ロシナンテスが当町で被災高齢者のコミュニティづくりを支援する事業を始めておりましたが、活動5年が過ぎて撤退され、その事業を当法人で引き継いでおります。少しでも被災高齢者の生きがいづくりに繋がれば、という思いで活動を続けております。

現在はNPOとして自立する資金を得るべく、落花生の栽培および販売を、千葉市からご指導いただきながら試行錯誤の中で進めているところです。

表彰式においては、本プロジェクト設立時の方々、そして関東在住の支援者たちも駆けつけてくれて、喜びを分かち合うことができました。亘理町に戻ってからも、支援いただいている方や当法人のメンバー達へ受賞を報告し、賞賛をいただいております。個人的にも、帝国ホテルへの宿泊というのは、おそらく生涯に一度だけのものであろうと思い感慨深いものでした。

最後に、今後も当法人の役割を自覚し、地域により貢献できるよう活動を継続していきたいと思いますので、末長く見守っていただければ光栄です。 有難うございました。

監事 鈴木 仁

  • 防潮林での植樹の様子
    防潮林での植樹の様子
  • 亘理町沿岸部復興基本構想 マスタープラン
    亘理町沿岸部復興基本構想 マスタープラン
  • 残存防潮林の維持管理活動
    残存防潮林の維持管理活動
  • 小学校での総合学習
    小学校での総合学習
  • 地域に新たな集いの場を 熱気球フェスティバル
    地域に新たな集いの場を 熱気球フェスティバル
  • 被災高齢者のコミュニティづくり 健康農業
    被災高齢者のコミュニティづくり 健康農業
受賞者とみなさまをつなぐプラットフォームプロジェクト「ひとしずく」