社会貢献の功績
冨田 江里子
(助産師)冨田 江里子
1997年に、日本の小さなNGO(IKGS@兵庫県山南町)の植林事業の現地コーディネーターとして活動する夫の冨田一也氏に合流して以来、20年にわたって西ルソン・サンバレス州・スービック町で暮らしている。地域の最貧困層の女性たちのための助産院(セント・バルナバ・クリニック)を運営している。2017年6月現在までに、4,500件の出産と産後訪問ケア、6万人を超える貧困層のあらゆる病人のケア、先天性心臓奇形児などの手術費用支援などを行ってきた。
この度は私の活動を、社会貢献者表彰に選んでいただき本当に感謝しております。数多くの受賞者の方々と並び、豪華な式典に参加させていただけたのは、身に余る光栄でした。
フィリピンでNGO活動をする夫と共に貧困層のエリアに住み、21年が経ちました。21年前のフィリピンの地方都市では、病院は支払い能力のある患者だけのために機能し、貧困層は取り残されていました。お産も、産婆が無理に気張らせて、おなかを押してというやり方が普通で、自然に待つという本来のお産がなく、結果死産や難産も珍しくありませんでした。「病院に行っても貧しい者は後回しにされる、相手にしてもらえない、お産はお腹を押して産ませるもの」という現地の貧困層の声に驚き、お金がなくてもできる看護があるはず、お産は自然経過を見守れば亡くならなかった命もあるはずだと、小さな診療所を立ち上げたのが18年前です。今日までに小さな診療所で、4973人の赤ちゃんの誕生に立ち会い、7万人を超える貧しくて病院へ行けない患者さんたちのケアに関わらせていただきました。24時間体制でお産に付き添い、産後は訪問ケア、エリアで出会う栄養失調児に給食、ミルク支援、保護施設への搬送、ネグレクトなどで保護が必要な子供たちへのデイケアの実地、診療した患者さんが重症であればその後訪問にて経過観察し、必要あれば病院へ運び、治療が受けられるように支援、心臓奇形など手術が必要な子供に支援を集め手術、とその時その命にとって必要と思われることを実践してきました。予防医学の活動は食事や日々の健康法などを紹介しています。このような活動が18年間もできてきたのは、多くの支援者の方が常に支えて下さったからです。
現地の人と関わる中から、昔ながらの生活が支えていた身体特性や、現地の伝統医療、病気の変遷など気づかされたことも多く、活動と学びもシェアしたいと日本からの訪問ボランティアの受け入れなども行ってきました。
近年はフィリピンの地方都市でも、貧困に対する医療状況も改善され、貧しさで医療が受けられないという状況は無くなりつつあります。しかし経験上、病院を恐れる貧困層がまだまだ多数いるのは事実で、すべての貧困層が簡単に病院へと向かえる訳ではありません。求める方がある限りは貧困層が安心してお産できる場所として、病院へ行けない患者のそばで支える者として活動を続けたいと考えております。
NPO法人NEKKO(助産師)冨田江里子