受賞者紹介

平成25年度 社会貢献者表彰

社会貢献の功績

ふじた きょうこ

藤田 京子

(千葉県)
藤田 京子

都内で勤務していた昭和59年、赴任先の墨田区の中学校に中国引き揚げ者の子どもが入学してきたことから「外国の文化背景を持つ子ども」の日本語教育分野で貢献してきた。藤田さんは職務の枠を超え存在自体が問題を抱える子どもと家族の心の拠り所となり支援を続けている。教職を退いた後、平成16年にFSC(外国人生徒学習の会)を発足、ボランティアの協力を得て学習会を行なっていたが、これだけでは不足であると、区教育委員会を動かし「すみだ国際学習センター」が設立、当該の子どもは来日直後から集中的に200時間を超える日本語教育を受けられるようになった。また、FSCはセンター内外を問わず当該の子どもの教科学習支援も行う。平成19年には「東京の日本語教育を考える会」を結成し、有識者や教育関係者、NPOなどと連携しフォーラムや講演などを通じ日本語教育の抱える諸問題を解明し、改善に向け活動している。

推薦者:中山 眞理子
「外国から来た子ども達と教育」のフォーラム
「外国から来た子ども達と教育」
のフォーラム

私が外国から来日した子どもと関わり始めたのは昭和59年頃から、勤務校の東京都墨田区の中学校に引揚者の子どもが多数入学してきたことによります。担当教員不在の続く学習室を時折訪ねるうちに子ども達の不安や家族の苦境を知り、理科教員の私が日本語指導から家族の生活支援にも関わるようになりました。私費引揚者の中には住む所や仕事、生活費等の余裕もなく、体調を崩している家族もあり、緊急に事を解決する必要がありました。日本語指導の傍ら、子どもと保護者伴い、身元保証人として家や仕事探し、生活保護申請や病院通い、親権委譲訴訟やいろいろな事件の処理等も当たりました。

その後一般の中国人が増えるにつれて高校受験が大きな問題になりました。日本の生徒と同じ条件で受験しなければならず、日本語の基礎から教科学習まで短期間に習得するために時には私宅で学習合宿などもやりました。

FSCの進級・卒業を祝う会
FSCの進級・卒業を祝う会

しかし、私の退職と同時に日本語教室は閉鎖され、子ども達の日本語を学ぶ場所も、指導できる教師も不足、さらに多国籍の子どもの増加により学校でも問題が発生し、区民からも日本語学級設置の要望が高まり、私へも支援の声も届けられました。私は区民とともに区教委に日本語学級設置の要望を続けましたが、受け入れる中学校はありませんでした。

平成16年12月、指導ボランティアを募り、区のボランティアセンターを使用して「外国人生徒学習の会(FSC)」を発足、学習をスタートさせました。さらに受験生の学習の不足を補うために、別途個人宅を借りて対応しましたが、進路へ向けての指導は不充分で、その現状を関係者や新聞、テレビなどマスコミにも訴えました。このことが功を奏し、区教委から相談を受けることになりました。

FSC学習風景
FSC学習風景

平成19年、区教委は私の指導方法案を全面的に受け入れ、区教委直轄の「すみだ国際学習センター」をスタートさせました。場所は通学に便利な小学校の空き教室を利用、有資格者2人以上を専任指導者とし、来日直後から集中的に早期に初級日本語を習得させ、教科学習への導入を早め、学習面の支援は(FSC)がボランティアとして参加することも了承、又入学者の希望をいれ可能な限り進路に配慮した学年の受け入れも認めました。200時間を超える集中学習とボランティアとの連携学習は生徒の学習意欲を高め、高校の進学状況も良好になり、区外の行政や国際交流協会、文化庁委託事業等各種講座やフォーラム等から講師として招聰され、紹介に努めました。

その他の活動としては東京都の「国際化市民フォーラム」の実行委員として長年活動していましたが平成19年、新たに「東京の日本語教育を考える会」を立ち上げ、代表として都内の有識者、議員、教育者、NPO、ボランティア団体と連携してフォーラムや講演、研究会等を通して東京の日本教育の抱える諸問題を解明し、改善に向けて活動を続けています。

来日した子供達の日本社会へのよりよい共生を目指して取り組んできたことが、この度の受賞へ導かれたことを大きな満足と感謝でいっぱいです。ありがとうございました。

  • 引揚の子供達と遠足交流会
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  • 水族館の見学
    水族館の見学
  • 成人になった引揚生I君家族の来訪
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受賞者とみなさまをつなぐプラットフォームプロジェクト「ひとしずく」